平成23年度は1.増大した妊娠子宮によって変化する日常生活動作に関するアンケート調査と2.非妊娠女性を対象とした妊婦疑似体験による視界の測定を実施した。アンケート調査の結果、妊娠21週以降、子宮底長21㎝以上、腹囲81㎝以上の妊婦では足元が見えにくくなることが示唆された。また、非妊娠女性を対象とした妊婦疑似体験による視野の測定では、平面において立位正面で足元から見える地点は、妊婦体験ジャケット装着後は装着前より有意に前方に延長し、増大した腹部が妊婦の足元の視界を制限していると考えられた。 平成24年度は1.実験:妊婦を対象とした視界の測定を実施した。対象:正常な妊娠経過の妊婦のべ51名。研究方法:立位と座位および階段昇降時における足元の視界について眼球運動測定装置アイマークEMR-8Bと特注スケールを用いて測定した。実験の結果、平面の立位正面において妊婦が見える地点の平均値は、子宮底長26㎝以上では約10㎝前方に延長していた。降りる階段の踏面の1段目は子宮底長26㎝以上では16%、31㎝以上では74%の妊婦が見えなかった。妊婦は子宮底長26㎝以上で足元の視界が著しく制限されると考えられた。 平成25年度は実験は終了し、妊娠20週、30週、36週時に足元の視界の測定を実施した妊婦7名について解析した。足元の視界の制限は視界が遮断された範囲の面積比によって検討した。その結果、妊娠20週と30週の比較では平均1.81倍、妊娠30週と36週の比較では平均1.28倍に遮断された範囲が拡大しており、妊婦の足元の視界が制限される範囲は妊娠20週、30週、36週と漸次拡大すると考えられた。アンケート調査の結果は平成24年度学術集会で発表した。妊婦の視界測定(横断的調査)の結果は平成25年の3学会の学術集会で発表した。妊婦の視界測定(縦断的調査)は平成26年9月の学術集会で発表予定である。
|