日本で開拓されてきた保健師の専門性を中核に、これを海外の保健師活動と比較することにより、現代社会の健康課題解決に資する保健師活動の学問的基盤としての新しい公衆衛生看護学の学問体系を、国際的な視点を踏まえて構築することを目的とした。WHO、米国、英国、カナダの公衆衛生看護学・地域看護学および公衆衛生学の基礎教育および保健師の能力に関する海外文献19本を収集した。また、新しい公衆衛生の知識を学習するために、New Public Healthに関する講演会を開催した。文献内の既存のコンピテンシーモデルの理解、日本での応用可能性を議論し、国際的な視点を入れた公衆衛生看護学の構築に向けて、質的に分析・統合を行った。その結果、公衆衛生看護学の学問体系として、保健師の活動目的、コアコンピテンシー、専門的コンピテンシー、領域(科目)を明らかにし得た。保健師の活動目的では、生存権の保障、人々のQOL・Well-beingの向上・社会的公正・サスティナビリティが含まれた。また、コアコンピテンシーでは、リーダーシップ・専門的自律・教育力・国際性・ITの能力が、専門的コアコンピテンシーでは、調整・交渉能力やヘルスプロテクションが包含された。さらに、領域(科目)には、環境保健論・社会行動学・公衆衛生看護研究論・公衆衛生看護教育学などが含まれた。これは、日本の現在の保健師の教育内容としてはあまり強調されていない視点であり、現代社会の健康課題解決に際して、社会・生活環境、国内外の専門的知識・技術を踏まえた保健活動の実施に資すると考えられる。
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