重度な障害があっても地域で暮らし、社会参加できる地域のあり方を示し、トータルなケア提供を実現可能で具体的に示すことは緊急の課題である。そのため、頸髄損傷者が自ら望む在宅生活のためのセルフマネジメントとは何かを当事者の視点から明らかにすることは重要である。本研究の目的は、社会参加を希望する在宅頸髄損傷者のセルフマネジメント能力を明らかにし理論構築することである。最終年度である本年は、当事者へ面接調査を行い、当事者の視点から在宅頸髄損傷者のセルフマネジメント能力を明らかにすることとした。 研究参加者は9名の在宅頸髄損傷者で、社会参加を自覚しているものとした。面接内容は、受傷から現在に至るまでの経過、今の在宅生活を維持継続するための工夫、自分にとっての社会参加について半構造的面接調査を行った。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて、当事者の視点から在宅頸髄損傷者のセルフマネジメント能力を理論化した。その結果【障害をもちながらも自律して生きる基本を学ぶ】【頸髄損傷の身体を健康に保つための生活を確立する】【仲間と出会い次のステップに踏み出すきっかけをつかむ】【家族と互いに自律したいい距離感を築く】【地域の一員として自分らしくある】【頸髄損傷者に対する理解を広げる活動をする】【ケア関係構築能力】【自分に必要な情報収集能力】といったカテゴリー抽出された。これらは、『頸髄損傷者としての自分の生き方を再構築するために身体を健康に保つ生活を確立するプロセス』であると定義できた。 本研究結果から、在宅頸髄損傷者は自らの生き方を再構築する力をもつ主体的で自律した存在であることを理解しなければならないことが分かった。今後の課題として、カテゴリーを洗練させつつ、頸髄損傷者の在宅生活の支援や在宅ケアに関わる専門職の教育への活用の可能性を検討する。
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