研究課題/領域番号 |
23660103
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
千葉 由美 横浜市立大学, 医学部, 教授 (10313256)
|
研究分担者 |
平野 浩彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 専門副部長 (10271561)
黒岩 厚二郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター, 研究員 (50260287)
荒木 厚 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60539196)
|
キーワード | 高齢者 / 栄養療法 / 帰結 / 経口摂取 / 静脈栄養 |
研究概要 |
経口摂取と静脈栄養の比較を行うにあたり、どのような患者背景が選定の要因となっているかを確認した。対象者は、高齢者急性期病院に入院した患者で2か年で合計6か月2276名であった。患者全体の平均年齢は、78.9±9.9歳であった。疾患別を特定してみた場合、脳梗塞は255名、肺炎(誤嚥性肺炎を除く)221名が多かった。入院患者全体でみると、入院3日目における経口摂取、IVHの割合は順に74.3%、17.0%で、8日目は順に78.5%、14.5%と若干の変動しか見られなかった。また、ADLレベルは自立・ほぼ自立、要介助、寝たきりは、入院3日目で順に37.2%、35.3%、25.1%、入院8日目では34.9%、34.6%、21.9%であった。認知症レベルについては、自立・ほぼ自立、一部要介助、常時要介助、要医療の順に、入院3日目で52.6%、13.1%、10.0%、13.8%、9.1%、入院8日目で48.8%、12.7%、9.8%、13.4%、8.5%であった。高齢者の場合、入院1週間で大きな変化は見られないことがわかった。経口摂取およびIVHの該当率はADLレベル、認知症レベル、全身状態が不安定、状態が不安定といった項目が関係していたが、これらの項目は互い有意な相関を示していた(p<.05)。入院8日目でも同様の状況で、これらの関係性は高かった。さらに、ADLレベル、認知症レベルが重度化するほど、入院3日目、8日目とも経口摂取該当率は段階的に減少し、IVH利用率は段階的に増加していた。呼吸器系疾患(肺炎)に関しては、臨床学的症状の改善がみられることから、入院8日目以降の栄養法切り替えのタイミングと患者状況との差を検討することが必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、高齢者専門の急性期病の65歳以上の高齢者を対象とした。一般的に栄養法の選択は、病態に応じて症状緩和の優先的選択が行われていると考える。しかし、対象のADLレベル、認知症レベルが全身状態や状態の安定などと関係しており、経口摂取、IVH選択にも関連があることがわかった。つまり、病態に応じた選択がなされていることは確実であるが、ADL、認知症レベル別にどのような経過や帰結推移をたどるかが必要であることがわかった。また、入院後3日目と8日目で大きな栄養法の利用率変動は見られなかった。つまり、平均年齢が78.9±9.9歳の入院患者に対する治療上の栄養法選択は、入院後1週間は維持された状態であることが考えらえる。高齢者が対象の場合、疾患、状態別に分類し、長期的視野にたった調査と帰結分析の必要性がある。高齢者の栄養法管理が急性期の治療学的栄養管理からいつの時点で脱していくかを知ることは興味深い。帰結へのプロセスを限られた期間であるが確認できたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
高齢者に対する栄養法に関する議論はつきない。エビデンスが十分でないテーマであり探索的な手段から焦点化していきたい。臨床では多要因が関係するデメリットを踏まえ、一方で、動物を用いた実験研究も検討している。人対象の臨床研究と動物対象の実験研究を用い、栄養療法の違いによる生体反応を精査することも検討している。具体的には今年度までに得られた結果をもとに、再度、臨床で対象の疾患や状態を特定した上で、生理学的指標を用いた分析を行うための調査を実施したい(これまでの対象の帰結調査も病院の了解が得られた時点で検討したい)。さらに、動物実験のデザインを検討し、具体的な準備に取りかかりたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度より新たに動物を用いた研究を検討する上で、予算配分の見直しが必要となった。ただし、当初計画にあげた臨床調査については、継続可能な形で、従来の予定通り、実施するものとする。 1.臨床調査(患者調査):引き続き臨床での調査を実施する。これまでの調査対象者に対し、生理学的所見を加えた分析を行うとともに、帰結についても調査する。さらに、対象疾患および状態を特定し、カルテ調査を行うとともに、小グループ間での分析を行いたい。データ入力は外部委託(80万円)とし、調査および分析などの研究補助者への謝金(50万)などにあてる。 2.動物実験:動物実験のデザインを検討するとともに、必要となる医療材料を購入する(50万)。また、デザイン構築のための文献検索などを実施する。 3.成果発表するための学会参加などの費用(50万)得られる予算内で実施できるようにする。
|