研究課題/領域番号 |
23660105
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
阿部 智恵子 石川県立看護大学, 看護学部, 准教授 (80337427)
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研究分担者 |
樫田 美雄 神戸市看護大学, 看護学部看護学科, 准教授 (10282295)
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キーワード | 母と子 / 相互行為分析 / 子育て支援 / コミュニケーション |
研究概要 |
本年度は、本調査の年であり、現場でのビデオ撮影に成功した。そのデータを下に分析を行うこともできた。その後研究者や子育て現場の職員とのデータセッションも重ね、分析の精度を上げていった。以下、それらのデータから得られた成果を述べる。 1つ目は、母と子の居場所つくりに関して。 「事例」では、遊びの中で2歳2ヶ月の子が泣き出す「仲間はずれ」という状況が起こった。子どもの泣き出し状況に対する対応をめぐって、母親どおし、職員、子と母の相互行為分析から、母が一見トラブルにみえる現象をあえてトラブル視せず、高度なコミュニケーションをとっていることが確認できた。これらは、子育て現場の仲間づくりにも、有効なコミニュケーションであり、子育て現場での母子のゆるやかなつながりと居場所づくりの方略であるといえよう。 2つ目は、母と子の遊びの中の相互行為について。 「事例」では、2歳6ヶ月の子がジャンプ遊びの中で、『あぶない』という発話を繰り返した。これらから、何が読み取れるかについて探求を行った。母が、子の発言に対応して、手を高く上げたり、下に下げたりする様子が観察された。データセッションを積み重ねていく中で、子が母の言葉を先取りして使用していること、『あぶない』という言葉を吟味して使えるということをあらわしていること、などが分析できた。また、母と子だけの相互行為だけでなく、周りを取り囲む他の母や子ども、母親どおし、職員とのやり取り、子供同士というような幅広い中で、多様な相互行為が見て取れた。これらは、子育て支援センターでの母子の相互行為を理解することにもつながり、また支援する側にとっても、貴重な知見になることであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
参与観察とビデオ撮影を7月に2日間行い、その後は、研究者のデータセッションと、子育て現場の職員ともデータセッションを行い、分析の精度をあげることができた。研究の目的は、子育て支援センターでの母子や職員、他の母子等の相互行為を観察し、そこから、「母と子の関係を捉えなおすこと」であるため、貴重な映像と参与観察からの新しい知見も得られており、研究が順調に進展しているといえるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成25年度)が最終年度であるため、ビデオ撮影を追加で平成25年の秋に行うことを予定している。昨年度のビデオ撮影の成功を参考にビデオ撮影のノウハウを駆使し、さらに新しい知見が得られるように撮影を行いたい。参与観察は、続けている。今年度は、音声状況のよいビデオ撮影を行うことができたので、次年度も撮影のタイミングや母子への配慮、母子の自然の姿を撮影できるように調査を行いたい。学会発表も、関西社会学会、関東社会学会を予定しており、学会誌への投稿も投稿先を現在検討中である。複数の学会誌に投稿を予定している。得られた知見を元に「子育て現場」、「看護教育」、「社会」にむけて情報発信をしていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、複数回、学会発表に出向くための旅費とデータセッション分析の精度を上げるため、6月と7月に行われるEMCA研究会主催のビデオエスノグラフィーの研修会に参加する予定である。その旅費にも当てたいと考えている。それと、トランスクリプト(転写文)作成も研究を行う上で、大変重要であるので、その費用にもしたいと考えている。
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