本研究では、早期に自宅退院を行った高齢患者に対して、退院前の不安と、実際に退院した後に体験した生活上の困り事や支障について実態調査を行うことを通して、退院直後の生活ニーズを明らかにしようとした。また、実際にどのようなサービスがあれば安心して自宅退院できるか、ある程度自力生活が行えるようになる迄の期間はどの程度かかるかについて、追跡調査によって明らかにすることであった。 2例の独居高齢者の自宅退院ケースから、退院直後から必要とされた支援として、食事・水分補給の準備、退院後の医療対応、室温管理などの環境調整などがあり、痛みや苦痛を残して退院直後は移動が難しいケースでは、トイレ移動の問題と清潔援助に関わる支援が必要となることが予測された。 現在は介護保険制度を利用できない限り、ヘルパーによる家事援助を受けることはできず、今回介入を行った身辺のちょっとしたケアや買い物、調理、後片付け、清掃、洗濯、などといったIADLを支援する制度はない。唯一はホームヘルプの自費利用があるが、金額の格差や、緊急時の対応がなかなか難しい現状がある。さらに、高齢者のなかには、こうした家事援助に対して人を雇って支援してもらうという発想も少なく、「再び自立生活に立ち返るための必要投資」として、有料サービスを活用するという発想の啓発が必要であると考えられた。 今後、独居高齢者、あるいは恒例夫婦世帯の益々の増加に向けて、きめ細やかで安心できるサービス提供システムを開発すると同時に、家事援助が重要な自立支援のサービスとして社会に公認されるための啓発が必要であると考えられた。
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