初年度には、特別養護老人ホームの看護管理者に対するアンケート調査を行った。その結果、看護管理者は、脱水症のアセスメントを行うことをやや難しいと認識している者が多かった。その理由としては、高齢者は典型的な症状が出ないことや確定診断としての血液検査を行うことが難しいこと等であった。そのため、新たなリスク評価指標が必要であると認識していた。最終年度は、特別養護老人ホームに入居している要介護高齢者90名に対する調査を行った。調査内容は、血液検査、唾液成分、口腔内水分量、腋窩の温度、湿度、皮膚水分量、体内水分量、バイタルサインを測定した。血清浸透圧値が292mOsm/kg・H20未満を正常群,292 mOsm/kg・H20以上を高リスク群とした。血清浸透圧値を従属変数として,年齢,性別,部屋の温度,湿度,生理学的指標としての血圧,脈拍,体温,口腔内水分量,腋窩の表面温度,腋窩の湿度,腋窩の皮膚水分量,総水分量,体水分率,細胞内液量,細胞内液率,細胞外液量,細胞外液率,血液データと唾液成分のすべての項目,個人的要因としてのBMI,要介護度,食事形態,水分摂取量,唾液採取の可否,口腔内水分量の測定可否を独立変数として,単回帰分析を行った。その後,単回帰分析にて有意差のあった項目のうち,血液データと部屋の温度・湿度を除くすべての項目を二項ロジスティック回帰分析(変数減少法)を行った。その結果、血清浸透圧値と有意な関連がみられたのは、腋窩の温度のみであった。唾液成分は、有用な指標とはなりにくいことが明確化された。腋窩の温度は、脱水症の新たなリスク評価指標として有用であることが示唆された。
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