研究実績の概要 |
少子化が進む中,出産後「母親の身体の回復」「子供との新しい生活を軌道にのせる」時期を支援することは,母親が安心して産み育てる上で重要である.本研究では出産後5日~6ヶ月の時期に焦点をあて,母親の産後うつ状態を縦断的に調査し,産後ケア支援システムの構築に向けた支援のあり方を検討した. H県内の研究協力の得られた産婦人科に通院している妊婦を対象とし,出産後5日,2週間,1・3・6ヶ月の各時期にアンケートを郵送し,返信があった妊婦に継続して送付した.日本語版エジンバラ産後うつ病自己評価票を用い,うつ傾向の有無別にクロス表を作成し回答の分布を比較した.次に,従属変数を「うつ傾向あり」とし 各質問項目を用い,ロジスティック回帰分析を行い各時点で分析し各時期での傾向を比較した.所属する大学の倫理委員会の承認を受けた. 配布数170名のうち,全ての調査に回答が得られた101名を分析対象とした(回収率59.4%).平均年齢は経産婦32.2±4.5歳(56名).初産婦30.3±4.6歳(45名).うつ傾向を示した者は,産後5日で20名(19.8%),2週間で21名(20.8%)で,影響していた要因は,産後5日で「母親の健康状態」「子どもが生まれて嬉しいと思うか」,産後14日で「同居の有無」「サポートを必要の有無」「赤ちゃんの世話の方法がわからない」「初産婦」等,多くの要因が影響していた.産後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月では,主に「夫のいたわり」や「夫婦関係」が影響をしていた. 産後5日は,母親自身の気持ちや体調が影響しているが,産後14日は,生活環境,子どもを世話する上での悩み等に変化し,最も多くの要因が影響していた.また,初産婦がうつ傾向を呈しやすい.1ヶ月以降は,夫が育児に協力をしてくれるものの,コミュニケションについて悩みが影響していた.母親の変化する精神状態,悩みや求める支援が変化しており,それらに応じた対策の必要性への示唆が得られた.
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