DNS (Domain Name Service)は現在のインターネットにおいて必要不可欠な分散データベースであるが,その高い分散性ゆえマクロな挙動についてはほとんどわかっていない.本研究では世界中から送信されるccTLD(日本国)レベルの全DNSサーバ(jpサーバ)へのパッシブトラフィック測定および統計的解析を通して,ccTLDレベルのDNSのマクロおよびミクロな挙動を明らかにし,DNSサーバの負荷分散,最適配置,そして異常な振る舞いについての知見を得る.また,平成25年度より本格的に稼働するDNSSECを用いたクエリに対するデータを収集・解析することで,DNSSEC普及の効果および問題点を明らかにした. 平成25年度は,DNSサーバの配置の効率性を調査するために,DNSクライアントおよびJPサーバ間のRTTに基づく評価を行った.実際にはRTTを計測することが困難であることから,主要な国際光ファイバ地図およびランドマークとなる主要都市を中継点として用いる測地線距離をRTTの代替として評価した.また,評価にあたり効率を表す二つの指標を提案し,これら指標において,現実のjpサーバの配置の効率および改善の可能性について評価を行った.本研究結果は査読付国際会議に採録された.また,上記トピックから派生したトピックとして,パッシブトラフィックデータより,DNSクライアントの使用ソフトウエアを推定するpassive finger print技術を提案・評価した.これは,DNSクライアントが送信するクエリの実装上の違いをもとに使用ソフトウエアを推定するものであり,評価の結果,高い精度でソフトウエアを推定することができた.この結果もまた,査読付国際会議として採録された.
|