本研究の目的は,情報検索におけるユーザの意図やコンテキスト,プロファイル,検索意図などを引き出しつつ,検索結果をダイナミックに再ランキング,再サーチする次世代情報検索手法を実現することである. 本年度は,日本人が曖昧な意図・コンテキスト・プロファイルなどを伝える際によく利用するオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)に注目し,実際に日本語発話者にオノマトペがどのように利用されているのかという点について調査した.ここでは,65年に渡る会話の記録がある国会会議録を利用し,その利用のされ方,変化,地域性などについて分類することで,コンテキストやプロファイル,意図の伝達可能性について整理した.また,オノマトペを利用した意図やコンテキストの伝達手法をサービス化し,そのサービス上でレシピを検索可能とする仕組みを実現した. また,音楽や動画,写真といったマルチメディアコンテンツの検索では,検索者が考える印象が重要となってくるため,500曲の音楽連動動画について印象に基づく検索を可能とするデータセットを構築するとともに,そのデータセットを利用した検索システムを実現した. 一方,これまでの研究の副次的な成果として,情報検索において忘れられがちなユーザインタフェースという観点について世の中に広く啓蒙するため,「失敗から学ぶユーザインタフェース~世界はBADUI(バッド・ユーアイ)であふれている」という本を執筆及び出版した.ここでは,悪いユーザインタフェースという点で,ウェブ上の困った検索システムの事例を示し,どこに問題があるのか,そしてどういった点に注意するべきなのかという点について詳しく説明を行った.
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