研究概要 |
本研究課題の目的を達成するためには,透明かつ薄型の超音波振動子が必要不可欠である.その候補として,2種類の超音波振動子を試作した.一つがシート状超音波振動子であり,薄型ガラス基板(厚さ0.mm程度の薄いガラス基板)に超音波振動を発生する圧電振動子を結合させたものである.圧電振動子に交流電圧を印加すると,圧電振動子基板表面の超音波振動が薄型ガラス基板にも伝搬し,基板上を伝搬する.基板端で反射し,基板全体へ拡散していく.結果,一つの振動子でも,基板全体に振動を分布させることができることを期待している.レーザードップラー振動計を用いた計測により,ある程度の範囲に超音波振動が分布していることを確認した.薄型であるため,市販のタッチパネルの表面へ設置することが可能である.実際に設置し,従来の皮膚感覚ディスプレイの制御方式を適用して,皮膚感覚を提示できることを実験的に確認した.もう一つが,透明な圧電単結晶基板を振動子として利用する方法である.ニオブ酸リチウムの4インチウエハを利用し,基板端部に超音波励振のための電極を設け,交流電圧の印加によりラム波の励振伝搬を期待したものである.数値計算に基づく電極設計を行い,2種類のプロトタイプを製作した.共振周波数を持ち,その周波数の交流の印加により,基板全体に振動が伝搬していることを振動計により確認した.一方,上記の方式では,高価な高周波電力増幅アンプを必要とするため,パルス波の印加による超音波励振の方法の検討を開始した.簡便なスイッチング回路で生成した数百kHzのパルス列で9.6MHzの弾性表面波を励振できることを実験的に示した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に製作した超音波振動子をペンタブレットインターフェースに実装し,「書き味」提示試験を行っていく.現実感のある書き味の提示のための制御系の構築とその客観的評価方法について検討を行う。消費電力を抑えるために,パルス列による超音波励振の検討を続け,すでに製作した超音波振動子での利用を検討していく.また,触覚フィードバックを備えたペンタブレットインターフェースの有効性を示すためのデモンストレーションの方法(専用アプリケーションの開発等)についても検討を行っていく.
|