研究課題/領域番号 |
23680012
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
稲見 昌彦 慶應義塾大学, メディアデザイン研究科, 教授 (00345117)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 知覚心理学 / ヒューマンインタフェース |
研究概要 |
本研究では、人の速度知覚のダイナミックレンジを拡大するための視覚提示システムの設計指針を得るとともに、構築システムの検証を行うことを目的としている。目的を達成するために以下の3つのPhaseにわけて研究を行う。<Phase1>では、強誘電性の液晶素子で構成された光学式時間周波数フィルタを用いた心理物理実験により、視覚における速度・運動知覚特性に関して基礎的な知見を得る。<Phase2>では、対象映像に適応した時空間フィルタ生成のための手法を探索する。<Phase3>では光学式時空間フィルタと高速度画像取得装置を組み合わせたシステムを試作し、その効果を検証するとともにシステムの設計指針を明らかにする。 これまでの研究において、<Phase1>に関しては、1.シャッターシステムを利用した時間フィルタによりブレの低減を実現できること、2.左右のシャッターの駆動周波数の制御によって、高速で移動する物体のモーションブラーと輪郭の両方を同時に観察できること、3.左右の時間フィルタに位相差をつけることで、並行移動する高速移動物体等の移動を、奥行き方向の知覚の変化として提示することが可能であるという3つの現象を発見した。特に、3.については心理物理実験により位相差を制御することによって移動物体の拡大および縮小を制御可能であることを示した。また、<Phase2>および<Phase3>に関して、HMDと高速度カメラを用いて空間の広範囲を重ねて提示する試作システムを構築し、空間フィルタ構築のための基礎的な知見を得た。 これらの基礎的な知見を統合した試作システムを用いて、今後は速度・運動知覚特性に対する効果を検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】の中で述べた各々のPhaseに関して、<Phase1>に関しては十分に成果を出すことが出来ており、本年度は<Phase2>および<Phase3>についても着手することが出来ている。ただし空間フィルタの効果については、心理物理実験による更なる検証が必要であるが、試作システムは安定して動作しており、更に一定の成果を纏めて学会発表を行っている。よって、おおむね順調に研究は進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、光学式時空間フィルタと高速度画像取得装置を組み合わせたシステムの改良を行い、心理物理実験によりその効果を検証する。具体的には透過型液晶装置、光学系機器、および画像取得装置を組み合わせた試作システムを作成し、空間フィルタに関する設計指針を得ることを目的として、当該システムが人の知覚特性に与える効果を検証するための心理物理実験を行う予定である。これと平成25年度までに得られた知見に基づいて統合システムを作成することで、速度・運動知覚特性に対する効果を検証していく。 また、実験室における心理物理実験による検証に限定せず、本研究の成果を一般の方に体験して貰えるデモストレーションの設計をアウトリーチ活動して行っていく。また得られた成果を取り纏め学会発表を行う。
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