研究課題/領域番号 |
23680025
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
後藤 玲子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (10375355)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子行政 / 公共IT投資 / プロアクティブ型行政サービス / マイナンバー制度 / 経済効果 / オープン・ガバメント / 市民中心 / 情報連携基盤 |
研究概要 |
本研究は、日本の公共IT投資についてマクロおよびミクロの両面から調査研究を行い、公共IT投資の費用対効果を実証的に分析評価することを目的としている。今年度は、日本の電子行政施策における重要課題であるマイナンバー制度およびオープン・ガバメントに焦点を当てて研究を行い、以下のことを明らかにした。 電子行政における近年の最大の変化は、市民中心への転換である。電子行政の文脈における「市民中心」という言葉には、「主権者たる市民の巻き込み」という意味と、「顧客中心主義」という2つの意味がある。どちらに力点を置くかは国や地域によって異なるが、どちらの場合でも、リアクティブ型からプロアクティブ型へという行政サービスの変化を伴っている。この変化は、行政サービスにおける申請主義という原則を大きく見直す契機になりうる。 電子行政の文脈におけるプロアクティブ型行政サービスには、①まだ顕在化していない利用者ニーズを掘り起こす、②手続きの必要性を減らす、③利用者が必要とする情報を積極的に届ける、という3つの特徴がある。「オープン・ガバメント」は①の特徴を持ち、アングロサクソン諸国が積極的に行っている。他方で北欧諸国は②や③に力点を置き、バックオフィス連携とサービスのワンストップ化によって行政サービスを高度化しようとしている。 申請主義から大きく転換するためには、マイナンバー制度の導入並びに国と地方及び官と民をまたがる情報連携基盤の構築が不可欠である。しかし、それだけでは十分ではない。利用者目線の取組みを促す動機づけの仕組みと、利用者目線の取組みを全国規模に広げるための仕掛けも必要である。それらの制度的・組織的改革を伴うならば、共通番号制度は大きな経済効果をもたらすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は公共IT投資の費用対効果をできるだけ明らかにすることを1つの目標としているが、研究計画提案後にいわゆるマイナンバー法案が閣議決定され、その成立が今後数年の公共IT投資およびその費用対効果に大きく影響することが確実となった。そのため、公共IT投資の実態調査はマイナンバー法案可決が見込まれる来年度(平成25年度)以降に集中的に行うこととし、今年度はマイナンバー制度の経済効果についてマクロの観点から検討した。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように、本研究課題は公共IT投資の費用対効果をできるだけ明らかにすることを1つの目標としている。いわゆるマイナンバー法案および政府CIO法案が2013年度通常国会で可決されると考えられることから、来年度(平成25年度)以降は、マイナンバー制度導入に伴うシステム改修経費を含めた実態調査を実施する予定である。また、政府CIOが制度的裏付けを得て活動する体制が整えられ、その体制下でオープンデータ戦略が推進されると考えられるため、国の公共IT投資の可視化が従来より進展し、マイクロデータを入手しやすくなると期待できる。
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