研究課題/領域番号 |
23680025
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
後藤 玲子 茨城大学, 人文学部, 教授 (10375355)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自治体広報 / 自治体広聴 / 認識ギャップ / 認知バイアス / 仮説検証型調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、公共IT投資の費用対効果を高めるための方策を実証的に明らかにすることを目的としている。平成27年度は、行政によるITを用いた広報広聴活動の実態、課題、住民ニーズ、住民の期待と現実のギャップ等を明らかにするため、某基礎的自治体において、自治体職員、一般住民及び事業者への質問紙調査及び面接調査を実施し、以下のことを明らかにした。第1に、住民はコンテンツ(情報自体、内容)重視、行政はツール(情報媒体、手段)重視という、行政と市民の認識ギャップを量的に明らかにした。例えば、住民が重視している広報活動の充実強化策は「お知らせ型の情報提供の充実」と「広報誌の充実」だったが、自治体が重視すべきだと考えていたのは、「新しいアプリの導入」、「登録分野の最新情報の電子的通知の導入」等であり、ギャップがあった。第2に、その認識ギャップが生じる理由は、住民ニーズに沿った広報を行うことが業務として明確に位置付けられていないことと、行政職員の認知バイアス(「優越の錯覚」や「現状維持バイアス」)にあることが分かった。第3に、本研究が採用した「当事者主体の仮説検証型アプローチ」は、改善策につながりやすいことが示唆された。本研究では、作業仮説の設計に行政職員を巻き込んで各種調査を行い、市民と行政の認識ギャップを当事者たる行政職員が調査結果から直接的かつ量的に把握することができるようにした。そのため、通常の社会調査や一般的な行政評価と比べて、行政に当該認識ギャップの「気づき」を促し、より信頼できる証拠に基づいてより市民目線の行政活動を行うように働きかける作用が大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、行政によるICTを用いた広報広聴活動の実態、課題、住民ニーズ、住民の期待と現実のギャップ等を明らかにするため、某基礎的自治体において、一般住民向けの調査票調査及び聞き取り調査を実施すると共に、自治体職員に対する聞き取り調査をした。また、特別なニーズをもつ方々の行政情報に関するニーズについては聞き取り調査で、若者の行政SNSに対するニーズについてはモニター調査で明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、政策評価・行政評価の実態、問題、問題発生要因を明らかにし、解決策を探るため、政策評価に関する研究の系統的レビューと、自治体への実態調査を行う予定である。オープンデータ及びエビデンスベーストポリシーの取組みが進んでいる欧米の状況に関する文献調査も並行して行うことを計画している。平成29年度は、最終年度に当たるため、これまでの研究を総括する。
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