本研究は、より費用対効果の高い公共IT投資を実現するための方法を実証的に明らかにすることを目的としており、特に、成熟した福祉国家として行政が市民や企業に対してきめ細かいサービスを提供するために、情報通信技術やデータをどのように役立てることができるのかという点を重視して研究を進めてきた。 平成29年度は、本研究プロジェクトの最終年度であった。そのため、これまで実施してきた実証研究を発展させた研究に引き続き取り組むと同時に、本研究を通じて得られた知見を総括するための研究を実施した。前者の研究としては、第一に、情報通信技術を利活用した自治体広報活動に関する市民ニーズと行政のニーズ予想のギャップに関する調査研究の成果を査読付き論文として公表した他、グローバルな文脈で再分析し、英語学術書用の草稿を執筆した。第二に、基礎自治体における市民サーベイの量と質を評価するための分析モデルを構築し、自治体市民調査の実施・利活用状況に関する質問紙調査を実施して、その結果を分析評価すると共に、昨年度得られたデータに基づく調査研究結果を論文化して学術論文として公表した。第三に、基礎自治体による障害者就労支援策の成功要因に関する仮説並びにその仮説を検証するために必要なデータ及び調査項目について検討し、データの入手可能性を探るため、自治体、都道府県労働局及び公共職業安定所に対する聞き取り調査を実施した。後者の研究としては、これまで行ってきた調査研究の知見を整理し、今後の研究課題を明らかにした。
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