研究課題/領域番号 |
23680027
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
相馬 雅代 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00578875)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会性 / コミュニケーション / 比較認知 |
研究概要 |
鳥類や霊長類の高度な社会におけるコミュニケーションは,音声信号にコードされる一方で,身体の動きや色・形といった視覚信号も情報伝達に大きく寄与している,本研究では,歌鳥をモデルに用い,雌雄間・つがい間・親子間で交わされるコミュニケーション行動の機能と個体発達を包括的に検討することで,社会性がもたらすコミュニケーション行動の意義を明らかにしようとしている.昨年度までの知見に基づき,本年度着目したのは,複数の(モダリティにまたがる)信号の相補性および学習性とその機能である. 昨年度までの研究により,研究対象のブンチョウは,オスの求愛歌中において発声(さえずり)と非発声音(嘴音)を組み合わせて表出するという珍しい現象に関して,予備的知見を得ていた.そこで本年度は,発声学習由来であるさえずりと嘴音とが,どのように統合され「リズム」を形成しているか,定型的パターンはみられるのか,またさえずり学習で確認されるような父子間での行動の類似性は見られるのかといった見地から検討をおこなった.得られた結果からは,嘴音の表出がさえずりと比べてランダムではあるものの,ある程度のパターンを持って発音されており,さらにこのパターンが学習性である可能性が示唆された.このことは,歌鳥において重視されがちな声だけでなく,それ以外の身体運動によって表出されるシグナルも,コミュニケーションにおける意味のある不可分な要素を担っていることを意味する. またこのような鳥種別に得られている知見とあわせ,求愛にともなうダンス(ディスプレイ行動)が,なぜ,どのような生態要因下において進化したのか,網羅的な系統種間比較研究にも着手しており,歌・ダンス・羽装の二型という視聴覚にまたがるシグナルがどう関わって,あるいはどう独立に,進化したのかについても,成果を得つつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では予測していなかった現象,全く知られていなかった新たな発見などが加わりつつあるため,研究の進行はまったく予定の通りというわけではない.ただし,これらの新規性の高い予備的知見は,いずれも本研究課題の目的に鑑みて非常に有用であり,よい意味で予定外の進捗とみなすことができる.このことは,発表論文および学会発表にもあらわれる通りである.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果の学会発表などを通じて,海外の研究者と意見交換をするだけでなく,共同研究の機会を得られる見込みである.とりわけ鳥類の行動研究においては,自らの研究室で飼養できる種数・個体数ともに制限があり,より豊かなデータと知見を得るために,このような機会を有効に活用することを考えている.
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