研究課題/領域番号 |
23680029
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山本 慎也 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (90371088)
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キーワード | 神経科学 / 認知科学 |
研究概要 |
我々は、常に外界から入力させる多数の情報を処理している。例えば、ある単一のイベントから生じた視覚情報と聴覚情報は、別々のセンサー(受容器)を介して入力されるが、主観的にはあくまで単一のイベントとして知覚される。これは、多感覚のバインディングと呼ばれる現象である。もしこのバインディングの機構が働かなければ、単一イベントからの視覚・聴覚情報は、別物として扱われてしまうため、正しく外界を認知できなくなってしまう。すなわち、バインディング機構は我々が外界を認知するのに必要不可欠な基本的な情報処理である。本研究課題では、ヒトを用いた心理実験とサルを用いた動物実験によって、多感覚情報統合機構を解明することが目的である。 本年度は、主にこれらの実験系の構築を行った。ヒトを用いた心理実験では、マルチモーダル刺激の時間的順序および主観的同時性を判断させる実験系の構築に成功した。特に、分布や平均と範囲などのパラメータを調整することによって、実験に適切なパラメータを探し出した。この実験系により、来年度以降、本格的なデータの収集を目指す。サルを用いた動物実験の本年度の目標は、実験系の構築、主に神経活動の記録システムの構築であり、刺激提示システムの構築、眼球位置等の計測システムの構築、神経活動の計測システムの構築等、完成することができた。実際に主観的同時性がどの領域でコードされているのか、未知であるため、複数の候補領域から神経活動を記録し、各領域がこれらのメカニズムにどのように貢献しているのかを解明する必要がある。そのために、なるべく多くの領域から記録できるよう、チャンバーのサイズや角度を決定し、設置手術を行った。さらに、実際に神経活動を記録を開始することができ、来年度以降、データの収集に専念することができる状態となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、ヒトを用いた心理実験とサルを用いた動物実験を並行して行うというものである。本年度の目標は、各実験系の構築であり、特にサルを用いた実験系では、さまざまなシステムを同時にセットアップする必要があったが、その目標はおおむね達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本年度構築したセットアップを用いて、ヒトを用いた心理実験とサルを用いた動物実験を遂行していく。ヒトを用いた実験では、ゼロ点調整仮説の検証を引き続き行っていく。サルを用いた動物実験では、構築した実験系をもとに、神経活動の記録を行う。両実験を通じて、得られたデータをもとに順次実験を修正していく作業を進めていきたい。
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