研究課題/領域番号 |
23680030
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古澤 力 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (00372631)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 進化実験 / ラボオートメーション / 大腸菌 / ストレス耐性 |
研究概要 |
本研究は、人工進化過程における微生物の表現型・遺伝子型の変化を高精度に解析することにより、適応進化のダイナミクスを担うメカニズムの根源に迫ることを目的としている。本年度は、前年度までに構築してきたラボオートメーションによる自動進化実験システムを用いて、大腸菌の進化実験を行った。酸・アルカリ・界面活性剤・重金属などの11種類のストレス誘因物質をそれぞれ添加した培地において、大腸菌MDS42株の対数増殖期を保った1000時間程度の植え継ぎ培養を行い、それぞれの環境ストレスに対して親株よりも高い耐性能を持つ大腸菌株の取得に成功した。 次に、この進化実験で得られたストレス耐性株の超並列シーケンサを用いたゲノム変異解析を行った。11種類のストレスそれぞれについて5つの耐性株からゲノムDNAを抽出し、Illumina Hiseqを用いて300倍程度の冗長度で解析を行った。その結果、それぞれの耐性株において数カ所から20カ所程度の変異が同定された。興味深いことに、同じストレスに耐性となった株には共通の遺伝子に変異が同定されているケースが多く、それらの変異が耐性能の獲得に寄与することが示唆された。また、それらの株についてはマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、耐性能の獲得と遺伝子発現量変化の相関を解析した。結果として、同じストレスに耐性となった株は類似生の高い発現プロファイルの変化を示しており、耐性獲得に寄与すると予想される発現量変化の同定に成功した。これらの表現型と遺伝子型の網羅的情報を統合することにより、様々な環境に対する適応進化がどのようなメカニズムを基盤としているか、新たな理解が可能となると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中心的テーマである、ラボオートメーションによる自動進化実験システムに関しては、その構築と安定的な運用に成功しており、様々な研究に対する応用が可能となっている。また、その応用例である複数のストレス環境を用いた大腸菌の進化実験についても、およそ1000時間の培養によって耐性能を持つ大腸菌の獲得に成功し、その解析を進めることが出来ており、高い達成度を持つ研究課題であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ラボオートメーションによる自動進化実験システムを様々な研究に対して応用していくことを目指す。例えば、医学・薬学の分野では抗生物質の効かない多剤耐性菌の出現が問題となっているが、この進化実験システムによって、どのような表現型・遺伝子型の変化によって抗生物質耐性が獲得・維持されるかについて、詳細な解析が可能となる。また、微生物にとどまらず、ガン細胞などの培養細胞についても進化実験を行うことが可能であり、例えば抗ガン剤に対する耐性獲得メカニズムの理解など、さまざまな細胞腫に対する応用が期待できる。
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