研究課題
本研究は、人工進化過程における微生物の表現型・遺伝子型の変化を高精度に解析することにより、適応進化のダイナミクスを担うメカニズムの根源に迫ることを目的としている。その目的のために、ラボオートメーションによる自動進化実験システムを構築した。そのシステムを用いて、酸・アルカリ・界面活性剤・重金属などの11種類のストレス誘因物質をそれぞれ添加した培地において、大腸菌MDS42株の対数増殖期を保った1000時間程度の植え継ぎ培養を行い、それぞれの環境ストレスに対して親株よりも高い耐性能を持つ大腸菌株の取得に成功している。次に、この進化実験で得られたストレス耐性株の超並列シーケンサを用いたゲノム変異解析を行った。11種類のストレスそれぞれについて5つの耐性株からゲノムDNAを抽出し、固定された変異の同定を行った。その結果、それぞれの耐性株において数カ所から20カ所程度の変異が同定された。興味深いことに、同じストレスに耐性となった株には共通の遺伝子に変異が同定されているケースが多く、それらの変異が耐性能の獲得に寄与することが示唆された。また、それらの株についてはマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、耐性能の獲得と遺伝子発現量変化の相関を解析した。結果として、グローバル制御因子として知られるRNAポリメラーゼのσサブユニットがそれぞれのストレス耐性株において共通の発現量変化を示していることが見出され、こうした制御因子が重要な働きをしていることが示唆された。これらの表現型と遺伝子型の網羅的情報を統合することにより、様々な環境に対する適応進化がどのようなメカニズムを基盤としているか、新たな理解が可能となると期待できる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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