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2012 年度 実績報告書

脳形態形成を制御するダブルコルチンファミリーの作動機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23680035
研究機関公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所

研究代表者

古泉 博之  公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 神経細胞生物学部門, 研究員 (10334335)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワード神経科学 / 脳神経疾患 / 大脳皮質発生 / 神経回路形成 / 神経突起伸長 / 微小管 / 微小管結合蛋白質 / キナーゼ
研究概要

ヒトにおいてダブルコルチン(DCX)の変異は発生期に大脳皮質の神経細胞層構築異常を引き起こし、患者はてんかん症状を伴う。Dcxのファミリー遺伝子であるダブルコルチン様キナーゼDclk1, Dclk2はDcxと協調的に神経細胞の移動や軸索伸長、樹状突起形成において機能している。本研究では、脳形態形成におけるDCXファミリーのより詳細な分子、細胞メカニズムを解明するために、機能未知のプロテインキナーゼ部位を持つDCLK1/2に注目し研究を行っている。
これまでにDCLK1の新規基質としてMAP7D1を見出している。Dclk1欠損マウスでは脳梁を形成する軸索の伸長が阻害されるが、子宮内エレクトロポレーションを用いたマウス胎仔脳への遺伝子導入により脳梁の軸索を形成する大脳皮質神経細胞においてMAP7D1の発現を抑制すると、同様に軸索伸長が阻害された。またDCLK1によるMAP7D1のリン酸化部位Ser315のセリンをアラニンに置換し、リン酸化を起こらなくした変異体の過剰発現によっても脳梁の軸索伸長が阻害され、一方MAP7D1の野生型の過剰発現では影響はみられなかった。これらの結果からDCLK1によるMAP7D1のリン酸化が軸索伸長に関与する可能性が示唆された。またMAP7D1は軸索輸送に関わるモータータンパク質キネシンの1種と相互作用していることを明らかにし、現在、DCLK1がMAP7D1のリン酸化を介しキネシンの機能調節に関与する可能性について検討を行っている。またDclk1/Dclk2二重欠損マウスでは高床式十字迷路を用いた行動解析により、不安様行動が低下していることが明らかになった。これらの研究成果は、脳の発生過程の分子メカニズムを明らかにするだけでなく、てんかん発症や、不安の発現に関与する神経回路におけるDCXファミリーの機能を考える上で重要な情報となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的はDCXファミリーのうち特にDCLK1/2に着目し、脳の発生過程の分子メカニズムを解明するとともに、この二重欠損マウスを用いて病態の発症メカニズムに迫ることを目的としている。これまで機能未知であったDCLK1のプロテインキナーゼ部位の新規基質MAP7D1が、軸索伸長において機能しており、キナーゼ部位も脳の発生に重要な役割を持つことを初めて示したという点で評価できる。またMAP7D1に結合する分子として軸索輸送に関わるモータータンパク質キネシンの1種を同定し、DCLK1による軸索伸長の分子、細胞メカニズムを考える上で大きな進歩が得られたという点で評価できる。さらにDclk1/Dclk2二重欠損マウスで不安様行動の低下という新たな行動異常を発見し、ヒトにおける病態の発症メカニズムに迫る新たなツールが確立されたという点でも大きく評価できる。

今後の研究の推進方策

DCLK1がMAP7D1のリン酸化を介しキネシンの機能調節に関与する可能性について検討を行うために、DCLK1を欠損、MAP7D1を発現抑制、MAP7D1のリン酸化変異体を過剰発現させた大脳皮質神経細胞において、キネシンやその輸送担体のダイナミクスを観察する。またDclk1/Dclk2二重欠損マウスで観察された不安用行動の低下が脳のどの部位のどの細胞種のいつの時期の異常によるものであるかを明らかにするための一歩として、Dclk1/Dclk2コンディショナルノックアウトマウスを用いて時期、部位、細胞種特異的にDCLK1およびDCLK2を欠損させることのできる系を確立する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ダブルコルチンキナーゼの新規基質MAP7D1は神経突起伸長に関与する

    • 著者名/発表者名
      古泉博之、藤岡 洋美、Joseph Gleeson、榎本和生
    • 学会等名
      Neuroscience2012(第35回日本神経科学大会)
    • 発表場所
      名古屋

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公開日: 2014-07-24  

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