研究課題/領域番号 |
23680039
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
斉藤 貴志 独立行政法人理化学研究所, 神経蛋白制御研究チーム, 副チームリーダー (90360552)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / モデルマウス / アミロイドβペプチド |
研究概要 |
アルツハイマー病(AD)研究を効率的に進めるために最も重要なツールは、ADモデル動物である。我々は、これまでにアミロイド仮説に則したノックインマウス(第二世代:APP(NL-F)-KIマウス,第三世代:APP(NLE-F)-KIマウス)の作製に成功した。また、第三世代マウスの亜種としてAPP(NLQ-F)-KIマウスの作製にも成功した。 APP(NL-F)-KIマウスの病理は、第一世代ADモデル:APP-トランスジェニックマウスで認められていた病理よりも、さらに早くアミロイド病理を形成することが明らかとなった。このマウスから得られた結果は、マウス単独(交配などを行わずに)で、これまでの研究で数多く作られたADモデルマウスよりも、遺伝子改変を最小限に止めつつ(artificialではなく)、かつ患者の病理に近いマウスである。現在、さらに加齢させたマウスの解析を行い最終確認を行っており、投稿準備中である。また、ADに関連する様々な遺伝子改変マウスとの交配も行っており、第四世代マウスとして、AD病理形成の加速・抑制因子の探索に取りかかっている。現在までに、ネプリライシン欠損マウス、カルパスタチン欠損マウスとの交配させ、加齢させている。 APP(NLE-F)-KIマウスに関しては、C57BL/6系マウスへの戻し交配も終了し、APP(NLQ-F)-KIマウスと共に、加齢・繁殖を継続している。若齢の第三世代マウスの解析では、一部予想外の結果が得られているものの、APP(NL-F)-KIマウスを比較対象とした解析において、予想通りの結果が得られており、今後の解析を加速させる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画当初よりも、遙かに早く期待していたアミロイド病理が検出され、またその病理像が、これまでのモデルマウスに比べ、患者の病理像により類似したものである。更に、他の遺伝子改変動物と交配させることにより、病理の出現がさらに加速する事も明らかとなった。これにより、いつ病理が形成されるか分からない手探りの状態から、何ヶ月後にはどの程度の病理を呈しているかの予測が可能であり、計画をスムーズに進展させている大きな要因となっている。また、新規マウス(APP(NLQ-F)-KIマウス)の作製に関しても、これまでのノウハウにより、作製に掛かる時間が短縮され、またC57BL/6系での作製に成功したことから、戻し交配を行う必要がなく、すでに加齢のための飼育が開始されている。
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今後の研究の推進方策 |
第二世代マウス(APP(NL-F)-KIマウス)の加齢解析を完了させ、その病理を指標に第三世代、第四世代ADモデルマウスの解析を進める。特に、第四世代は、他の遺伝子改変マウスとの交配を進める事が中心となるため、数系統のラインを同時に飼育繁殖する必要がある。それらマウスが解析月齢に達した時点で、随時(3ヶ月毎を基本として)、生化学的・病理学的・行動学的解析を速やかに行っていく。解析には従来の方法が適用できるため、安定した結果が得られるものと予想される。また、得られた結果と、患者病理との比較を行う必要がある。
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