本研究は、Ca^<2+>依存的な神経回路形成過程を、カルシウム依存的リン酸化酵素(CaMK)I経路が制御するという可能性に着眼し、多彩な刺激によって惹起される細胞内Ca^<2+>上昇が、如何にして細胞を変化させ、応変かつ柔軟な回路装飾を行うのか、新規の神経回路形成機構を解明することを目指している。この目的を達成するために、H23年度は下記の項目についての研究を実施した。 (1)CaMKIファミリーに属する複数のアイソフォームの遺伝子欠失マウスの作出を推進し、null変異体の作出を完了した。本null変異体は、解剖学的な顕著な異常はなく、通常通り系代可能であることを確認した。また、作出したnull変異体において、標的とする遺伝子断片が確かに欠失していることを、qPCR法により確認した。 (2)(1)で作出したnull変異体を用いて、各アイソフォームを検出する抗体について評価を行ない、内在性のリン酸化酵素を検出できる抗体を見出した。 (3)神経回路形成に関わると考えられる複数のリガンドについて、CaMKIの活性化リガンドとして機能する可能性を検討した結果、複数の候補リガンドを同定した。 (4)精製リン酸化酵素を用いて、in vitroにおける基質候補の探索を推進するとともに、至適基質配列の同定を行い、酵素活性化機構についての検討を行った。 (5)神経回路形成中の神経細胞における自発的なCa^<2+>上昇を観察するための実験系の確立を進めた。
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