本研究の目的は、生きたマウス脳における樹状突起活動の動作原理を解明することである。この目的のため、我々は高速に3次元でスキャンできる2光子顕微鏡を構築し、これにオプトジェネティクス法、局所薬理法とを組み合わせ、感覚野における5層錐体細胞の樹状突起活動を記録した。その結果、麻酔下におけるマウスの体性感覚野-後肢領域の樹状突起は、後肢または高次運動野への電気刺激でそれぞれ応答が観察された。この樹状突起活動はマウスが覚醒したときに有意に増大し、さらに、この増強は高次運動野へのTTX投与で減弱することを見出した。つぎにこの高次運動野―感覚野への回路が存在するかどうかを調べるために、マウスの高次運動野に順行性神経トレーサーであるAAV-GFPを注入した。注入の約4週間後に脳スライスを作成し蛍光観察すると、高次運動野からの投射領域は第一次体性感覚野であることを確認した。また、逆行性神経トレーサーであるコレラトキシンサブユニットB(Alexa555)を第一次体性感覚野に注入し、投射細胞が高次運動野のどの層に存在しているかを蛍光観察した。その結果、2/3層、5a層、6層の高次運動野の興奮性神経細胞が投射細胞であることを見出した。 研究計画作成時に記載した動物行動課題(体性感覚刺激を手掛かりとした弁別課題)はトレーニング装置の開発、動物トレーニングの開始に至っている。今後はトレーニングを終了したマウスを作成した段階で、神経活動の記録を開始する。
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