研究課題/領域番号 |
23680053
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 勇磨 北海道大学, 大学院・薬学研究院, 助教 (60451431)
|
キーワード | 薬学 / ミトコンドリア / 遺伝子送達 / ナノテクノロジー / 細胞・動物 / 遺伝子治療 / イメージング / バイオテクノロジー |
研究概要 |
本申請研究では、多彩な機能を有するミトコンドリア(Mt)での遺伝子発現を実現するため、『骨格筋Mtへの遺伝子送達』および『Mt遺伝子発現調節』を可能とする革新的基盤技術の構築を行う。H23年度は、下記の項目を中心に研究を遂行した。 1.Mt選択的リガンドの探索:研究協力者・兵藤守助教(北海道大学)が開発中のOrganella Based SELEX法を用いてMt選択的リガンドを探索する評価系を構築した。また、転写・翻訳の場であるMtマトリクスへの遺伝子送達を実現するため、培養細胞を用いた検討も行った。その結果、多重型構造体DF-MITO-PorterがMt選択的な分子送達を実現し機能性分子のキャリアとして有用である事が確認された(Y.Yamada et al,Mol.Ther.(2011),Y.Yamada et al,Biomaterials(2012))。 2.骨格筋Mtを標的とした核酸送達の検討:ハイドロダイナミクス法を利用した骨格筋Mtへの核酸送達を試みた。投与体積、投与速度、投与量などを最適化する事でMtへの送達核酸量を飛躍的に上昇させる事に成功した。また、FISHを利用して骨格筋に送達されたpDNAを可視化することに成功した。 3.核酸パッケージング:Mt転写因子TFAMでパッケージングしたpDNAナノ粒子がin vitro転写反応で高い転写活性能を示し、Mt内での遺伝子発現活性に有望である事が見いだされた。また、オリゴ核酸封入DF-MITO-Porterを構築し、従来型キャリアと比較して効率的なMt移行を達成する事を確認した。さらに、内因性mtRNAを標的としたMt遺伝子抑制を試み、本システムによってMt遺伝子調節が可能である事が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mt選択的リガンドの探索は、評価系の構築に成功しDNAよりもRNAの方がMt送達に適していることを見出した。特定の配列を決定していないが、H24年度中に候補配列を絞り込む予定である。骨格筋Mt標的型DDSに関しては、in vivo投与方法の検討から開始し、ハイドロダイナミクス法が骨格筋Mtへの核酸送達を可能とする事を示した(前倒しで行った項目)。また、核酸パッケージングに関してはTFAMが外来遺伝子の転写活性化に有利である事、オリゴ核酸送達によるMtRNAの標的化が可能である事を示した。本件は、核酸パッケージングに留まらず遺伝子調節の評価まで確立しており、本申請研究を大幅に進めることができたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、『in vivo適応型Mt核酸送達システムの開発』および『Mt内での遺伝子発現の検証』を中心に研究を進める予定である。 1.H23年度に構築したMt送達が可能な核酸搭載MITO-Porterの核酸送達能の向上を図る(in vitro)。具体的には、Mt選択的アプタマーおよび種々のMt targeting signal RNA/Proteinをキャリアの表面に配置しMt移行能を向上させる。本検討で構築したキャリアとハイドロダイナミクス法を組み合わせ骨格筋Mtを標的としたDDSの構築へと発展させる(in vivo)。 2.最適化した核酸搭載MITO-Porterを用いて、生細胞Mtにおける遺伝子発現を検証する。また、H23年度にMt-RNA標的が可能である事が確認できているのでオリゴ核酸送達の検討も並行して行う予定である。
|