研究課題/領域番号 |
23680053
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 勇磨 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60451431)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 薬学 / ミトコンドリア / 遺伝子送達 / ナノテクノロジー / 細胞・動物 / 遺伝子治療 / イメージング / バイオテクノロジー |
研究概要 |
本申請研究では、多彩な機能を有するミトコンドリア(Mt)での遺伝子発現を実現するため、『骨格筋Mtへの遺伝子送達』および『Mt遺伝子発現調節』を可能とする革新的基盤技術の構築を行う。H24年度は、下記の項目を中心に研究を遂行した。 1. Mtを標的とした核酸送達の最適化 (in vitro): 種々のMt targeting signal RNA/Protein をキャリアの表面に配置した核酸搭載MITO-Porterを構築し、Mt移行量を共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて解析した。これらの解析情報を基に、キャリアの核酸送達能を向上させる事に成功した。 2. Mtを標的としたin vivoにおける核酸送達の検討: 当初計画では、骨格筋Mtへの核酸導入による遺伝子発現の検証を行う予定であったが、骨格筋Mtの単離効率が低く遺伝子発現評価が困難になると予想された。そのため、Mt遺伝子発現評価の標的臓器として新たに肝臓にも着目してMtへの核酸送達を試みた。投与体積、投与速度、投与量など種々の条件を検討しハイドロダイナミクス法による肝臓Mtへの核酸導入に成功した。 3. Mt遺伝子発現制御の検証 (in vitro & in vivo):アンチセンスRNA (ASO)をMITO-Porterを用いて細胞Mtに送達し、標的mRNAの発現量を定量的RT-PCRにより評価した(遺伝子発現抑制の検証)。その結果、ASO導入により40%の抑制効果が認められ、さらに標的mRNAがコードする内因性Mtタンパク質の発現量の低下が観察された。一方で、送達分子にMt特異的プロモーターLSPおよびMtコドンを有するGFP発現プラスミド(pLSP-mtGFP)を用いた場合(遺伝子発現の検証)、生細胞Mt内でのGFP発現は確認されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自のMt選択的リガンドではないが、種々のMt targeting signal RNA/Proteinを検討し、Mt送達能を飛躍的に向上させたMITO-Porterを構築した。 さらに、細胞系ではあるがリポソーム型人工核酸送達キャリアを用いたMt遺伝子発現の抑制を世界で初めて達成した。 また、骨格筋Mtへの核酸導入を前倒しで行ったため(H23年度)、H24年度までに当初計画の骨格筋に加え肝臓を標的としたMt核酸送達法を確立することができた。そのため、最終年でのin vivo遺伝子発現制御に関する準備は盤石であると考えている。 一方、遺伝子発現の検証に関しては、送達する遺伝子ベクターの再設計などが必要であることが確認されたが、最終年で到達目標を達成すべく万全な計画を立案している。
|
今後の研究の推進方策 |
『in vivo適応型Mt核酸送達システムの開発』に関しては、MITO-Porterとハイドロダイナミクス法を統合した骨格筋および肝臓Mtを標的とした核酸送達システムを構築する。Mtに送達された核酸量は定量的PCRによって測定する予定である。 『Mt内での遺伝子発現の検証』に関しては、送達遺伝子ベクターを改良し生細胞および組織での遺伝子発現を評価する予定である。具体的には、遺伝子ベクターにプロモーター部分のみを付加するのではなく、天然型mtDNA (16,300bp)の大部分を保持したΔmtDNA(約10,000bp)に外来タンパク質をコードするMt 遺伝子コドンを挿入したMt発現DNAベクター(ΔmtDNA-mtGFP)を設計する。 最終的には、ΔmtDNA-mtGFP搭載in vivo適応型MITO-Porterを構築し、in vivoにおけるMt遺伝子発現を目指す。転写過程は、逆転写リアルタイムPCR によって骨格筋Mt 内のmRNA 量を定量し、翻訳過程は生組織切片の共焦点レーザースキャン顕微鏡観察によってGFP のMt 内での発現を評価する。
|