研究課題/領域番号 |
23680054
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永井 展裕 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (30400039)
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キーワード | 網膜 / ドラッグデリバリー / 強膜 / 神経保護 / 徐放 / 網膜色素変性 / 加齢黄班変性 / デバイス |
研究概要 |
本研究は、網膜疾患治療における低侵襲で効率的な眼内薬物投与デバイスとして「経強膜ドラッグデリバリーシステム(DDS)」を開発し、実際の臨床薬物を複数徐放化するデバイス条件を確立し、網膜変性動物モデルを用いて網膜保護効果を評価することが目的である。3年計画の1年目にあたるH23年度は、3種類の薬物を1か月以上に渡って多剤動態制御できるマルチDDSの開発を目的とした。3種類の蛍光色素(フルオレセイン、ローダミン、DAPI)をモデルドラッグとして用いて、各色素の独立徐放制御条件と、ラット眼への移植による色素の眼内移行性を評価した。各色素は分子量の異なる2種類のポリエチレングリコールジメタクリレート(以下、長鎖モノマーをPEG、短鎖モノマーをTEGと呼ぶ)の混合物と混ぜてUV光重合しペレット化した。ペレットをTEGリザーバーに充填し、PEG/TEGカバーで蓋をしてデバイスを作成した。デバイスをリン酸緩衝液PBSに浸漬し、定期的にPBSを回収して蛍光強度を測定した。その結果、各色素のPEG/TEG組成比をそれぞれ変えて充填することによって、各色素の徐放速度を個別にコントロールすることができた。さらに、カバーのPEG/TEG組成比も変えることによって、各色素の徐放速度をコントロールできた。以上より、ペレットとカバーの2段階徐放制御によって、拡張性の高い3種薬物マルチDDSを開発した。次に、徐放性の異なるデバイスをラット眼の強膜上に移植し、1週間後と4週間後に眼球の切片を観察した。デバイスは、DAPIの放出が早く、ローダミンが遅いデバイスと、逆にDAPIが遅く、ローダミンが早いデバイス(いずれもフルオレセインは一定)の2種類を作成した。その結果、DAPIの放出が早いデバイスではDAPIの網膜への移行が良く、逆にローダミンの放出が早いデバイスではローダミンの網膜移行性が良かった。すなわち、デバイスの徐放条件と色素の網膜移行性がほぼ一致していた。眼球組織のホモジネートの蛍光強度測定からも同様の結果を得た。現在、臨床薬物としてGeranylgeranylaceton、Edaravone、UnoprostoneをDDS化し、高速液体クロマトグラフィーで徐放量を定量中である。また、網膜光障害モデルラットに移植し、網膜保講効果存確認中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の要となる3種の薬物独立徐放条件の確立に成功し、さらに眼内への薬物移行性も確認しているため、順調に進展している。実際の臨床薬物でも、徐放データがそろってきており、さらに動物モデルでも良好な結果が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り研究を進める。H24年度は3種類の薬物のマルチDDS化による相乗効果を確認することが目的となるが、薬物の種類が多く、実験条件が複雑になるため、動物モデル実験で再現性を得ることに時間を要する可能性があるが、無駄な実験を省き、結果を精査しながら効率よく実験を進める。
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