研究課題/領域番号 |
23680054
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永井 展裕 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30400039)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 網膜疾患 / 経強膜 / 神経保護 |
研究概要 |
本研究は、網膜疾患治療における低侵襲で効率的な眼内薬物投与デバイスとして「経強膜ドラッグデリバリーシステム(DDS)」を開発し、実際の臨床薬物を複数徐放化するデバイス条件を確立し、網膜変性動物モデルを用いて網膜保護効果を評価することが目的である。3年計画の2年目にあたるH24年度は、実際の臨床薬物Geranylgeranylaceton(GGA)、Edaravone(EDV)、Unoprostone(UNO)をDDS化し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で徐放量を測定し、徐放制御条件の確立を目指した。また、各薬剤の薬効濃度をIn vitro細胞培養で検討した。各薬剤を分子量の異なる2種類のポリエチレングリコールジメタクリレート(以下、長鎖モノマーをPEG、短鎖モノマーをTEGと呼ぶ)の混合物と混ぜてUV光重合しペレット化した。ペレットをTEGリザーバーに充填し、PEG/TEGカバーで蓋をしてデバイスを作成した。デバイスをリン酸緩衝液(PBS)に浸漬し、定期的にPBSを回収して徐放された薬剤濃度をHPLCでを測定した。その結果、カバーのPEG/TEG組成比を変えることで、各薬剤の徐放速度をコントロールできた。次に、網膜色素上皮細胞を低酸素・低栄養培養中に各薬剤を添加し、負荷培養から細胞を保護する薬剤濃度を検討した。その結果、GGAは30μM、EDVは600μM、UNOは300μM付近で有意に細胞保護効果を認めた。今後は、上記濃度で徐放するGGA, EDV, UNOのデバイスを作成し、網膜変性モデル動物で網膜保護効果を検討する。さらに、保護効果を認めたデバイス条件を組み合わせたマルチDDSで相乗的な網膜保護効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書では、H23年度にマルチ徐放デバイス条件を確立し、H24年度は細胞培養による薬効評価と動物実験による薬剤の網膜到達性を評価することを計画した。当初の予定通り、H23年度には、モデル薬物として3種類の蛍光色素を使用し、各色素の独立徐放制御条件を確立した。さらに、前倒しで動物実験を実施し、各色素が網膜へ到達していることを確認した。H24年度は、実際の薬剤として、Geranylgeranylaceton(GGA)、Edaravone(EDV)、および申請書に記載したNilvadipineの代わりに我々が検討中に見出したUnoprostone(UNO)に変更し、これら3種の薬剤の徐放制御性を検討した。その結果、H23年度の蛍光色素の徐放条件を応用し、各薬剤の徐放制御条件を確立した。また、各薬剤の薬効をIn vitro細胞培養で評価した。網膜色素上皮細胞の低酸素・低栄養培養下に各薬剤を添加し、細胞保護効果を検討した結果、各薬剤の有効濃度を評価することができた。以上より、計画通りに研究は進行中であり、最終年度の網膜変性モデル動物の実施の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤マルチ徐放デバイスは確立しており、今後は網膜変性モデル動物に対する網膜保護効果エビデンスを得ることが目標となる。当初の計画通り、モデル動物として、ラット、サルを用いた網膜レーザー照射による新生血管モデル、およびトランスジェニックウサギを用いた網膜色素変性モデルを計画している。サルおよびウサギについてはコストの問題があるため、実施が難しい可能性はある。その場合は、入手が簡単なトランスジェニックラット(S334terラット)を用いた網膜色素変性モデルや正常ラットの網膜光障害モデルを使用する。デバイスを強膜上に移植し、定期的に網膜電図検査を行い網膜機能を評価する。複数のデバイス条件を移植し、効果の高いデバイス条件を見つける。効果が見られた場合は、遺伝子・タンパク発現、免疫染色、TUNEL染色等の詳細な分子生物学的評価を行い、網膜保護メカニズムを検討する。また、臨床応用を見据えた適切なデバイス形状の確立も工学研究科の協力を得ながら実施する。
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