研究課題/領域番号 |
23680055
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 竜司 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50377884)
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キーワード | ペプチド / ECM / 人工血管 / 内皮細胞 / 平滑筋細胞 / 細胞選択性 / マテリアル / スクリーニング |
研究概要 |
本研究は、次世代医療機器のための革新的バイオマテリアルとして細胞選択性(目的の細胞を生着させ、目的以外の細胞を阻害する機能)を有する人工合成細胞外マトリクス『ミニマム(最小単位)ECM』の設計を、ペプチドのアレイ化技術とバイオインフォマティクス解析技術を融合させて行うことを目標としている。H23年度は細胞選択性ペプチドの組み合わせ効果のinvitroスクリーニングを中心研究課題として進め、大きく3つの検証を行った。(1)細胞選択性ペプチド(粉末)の受託合成:約10配列の既に取得していた細胞選択性ペプチドおよび新規取得したECM集積化選択性ペプチドを合成し、PCLのエレクトロスピニングシートへと加工して人工血管の基礎材料を10種類作製した。(2)ペプチドアレイを用いた配列組み合わせ・濃度組み合わせのin vitroスクリーニングでは、これまでECMに特化して探索してきたスクリーニングの規模をさらに広げ、3残基ペプチドの全組み合わせの中から特にECMに特徴的な配列を約300種類スクリーニングし、新たに細胞選択性ペプチドの取得と、これを説明する物理化学的性質のルール発見を行った。(3)最適条件に基づくマテリアル設計(シート)と詳細検証においては、上記マテリアルシートを加工後、SEMやXPS等で表面分析する評価技術を、他施設実験装置を用いて確立した。上記3つの検証を順調に進めたことで本研究はしい候補の発見やECMの物性の理解という科学的な発見と共に、実際の人工血管マテリアルの試作まで達成できた。これらの成果は論文発表および新聞報道(9月28日日経産業新聞)や企業からの問い合わせのような反響を受け、社会的ニーズに沿う研究意義を確認することができた。今後は人工マテリアルの詳細評価と機能性向上検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、人工ECMのデザインを目標として(H23年度)材料の準備、(H24年度)機能性の検証、(H25年度)、機能性の向上を大きなマイルストーンとして予定している。本研究の中でH23年度は細胞選択性ペプチドの組み合わせ効果のinvitroスクリーニングが大課題であったが、本探索は細胞選択性ペプチドの網羅探索、ECM選択的集積ペプチドの探索、という2つのスクリーニングを無事終了し、約100配列の第一候補配列を取得しただけに留まらず、これらを導入したPCLファイバーシートなどの実際の人工血管素材の合成および準備、in vitroの検証まで踏み込むことができている。このため、本研究の進捗は非常に順調であると言え、論文成果発表まで達成できたことからも、目標以上に本研究が進捗していると結論付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のおける今後の推進方策は、当初の研究計画を順調に進めることであり、研究遂行上での大きな問題や変更は無い。しかし本年度よりいかに動物実験(in vivo)の評価を行うことができるかが大きな課題の一つであり、医学部との連携体制作りが重要となる。さらに動物実験に入った段階で、生体内でのin vitor結果との食い違いが想定されるが、これをいかに表面加工法等で乗り越えられるかが検証課題となるが、現在高分子・バイオマテリアル系研究者との連携を深めつつあり、適時アドバイスを仰ぎながらこれを融合的に進める予定である。
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