研究課題/領域番号 |
23680055
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞選択性 / ECM / 人工血管 / ポリカプロラクトン / エレクトロスピニング / クリックケミストリー / ペプチドマイクロアレイ / 再生促進 |
研究概要 |
平成24年度の実施計画通り、細胞選択性ペプチドの組み合わせin vitroスクリーニングを実施し、各細項目について下記のような実績を得た。 ①ペプチドガラスアレイ上での網羅的効果検証。3-merペプチド全網羅配列を配したガラスアレイを用いて血管内皮細胞および平滑筋細胞の選択性アッセイ方法を確立し、これによりいくつかの物性的モチーフが各選択性を支配していることをつきとめた(配列情報は現在特許出願準備中)。ただし、ガラスアレイでの再現性には多少のバラツキが見られこれをより深く、かつ細かく検証するため今後さらなるアッセイを繰り返す。 ②細胞選択性ペプチドにより構成された人工ECM被覆人工血管材料のin vitorおよびin vivo評価。ポリカプロラクトン製の人工血管材料であるナノファイバーシートにペプチドを固着かする系を開発し、固着のみにて各種細胞の選択性が示せることをin vitroにて確認した。物性評価においては、各種測定法を試みたが、最も安定性の高い接触角およびゼータ電位測定を用いる評価系を確立し、これを用いて選択性ペプチドが最も効果的に選択性を示すための基礎的物性マップを作製した。ただし、in vivoに興じるために充分な人工血管を作出すには間に合わず、これは次年度に追加検証する予定である。 ③細胞選択性ペプチドの組み合わせ効果の再検証。ペプチドを組み合わせた評価をするためにはポリマー上への固定化結合法を開発しなくてはならず、アミノ基導入PNIPAMの合成開発およびアミノ基のPCL上への導入系の開発を進めた。結果、いくつかの有機合成法を用いて足場材料にクリックケミストリーで利用できる活性基を導入できることを確認した。本年度はこの基盤技術の創出に時間がかかったためさらなる解析は次年度に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度までの研究では、簡単だと当初予定されていたペプチドの固定化技術(有機化学)およびポリマー化技術(成形技術)に関して、共同研究を進めながら技術導入する時間を必要としてしまった。多くの研究協力者や、新しく開拓した協力者の協力を得ながら、貪欲に新技術を融合的に本研究に導入することを進めたが、基礎アッセイ基盤の確認に予想以上に時間がかかってしまった。しかしながら、当初の予定よりも遙かにケミストリーに裏打ちされた確かなアッセイ基盤技術が確立され、医療機器への展開にとって最重要評価項目である表面物性測定系も新しく構築することができたため、最終年度に向けて目標達成のための研究を進める基礎技術を充分に蓄積することができたと考えている。このため、現状ではやや遅れていると評価しているが、本年度大きく開発を進められると結論付けたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進は大きく3つに注力する。 ①ペプチドマイクロアレイを用いた細胞選択性モチーフルールの確定と細胞種展開。これまで血管内皮細胞および平滑筋細胞に限定して行っていた本アッセイ系を、線維芽細胞、血小板へと拡張し、人工血管を3-merペプチドの選択性で支配的に設計するための最上モチーフルールを確定する。より複数の細胞を比較することによって、より選択的なモチーフが得られると考えられる。 ②人工ECMの作出とin vitroおよびin vivo評価。前年度作出量が不足して行えなかったin vivoでの評価を迅速に進め、動物体内での設計人工ECMの有効性を検証する。この人工ECMの基礎材料としては、平成24年度に確立したPCLへのクリックケミストリーによる複合ペプチド導入材料や、固着化条件による複合ペプチド条件の検証を深める。 ③細胞選択性ペプチドの組み合わせ効果の再検証。前年度、基盤化学合成技術の確立に時間がとられてしまった本技術は、すでに検証の段階にあるため、より多くの配列の組み合わせ(配列および濃度)の影響を検証し、①と③の成果を合わせて、②のvivoでの評価材料をデザインする。
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