研究課題/領域番号 |
23680058
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
寺川 光洋 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (60580090)
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キーワード | レーザー医療 / ドラッグデリバリー / フェムト秒レーザー / 誘電体粒子 |
研究概要 |
非熱的ナノサージェリー(近赤外の集光フェムト秒レーザーによる細胞プロセシング)は細胞膜への小孔形成や細胞小器官破壊による細胞機能制御の重要技術として位置付けられている。本研究は高速局在集光場を用いて細胞および抗原分子の高スループット・ナノサージェリー技術を創出することを目的としている。 平成23年度は、細胞膜の高スループット・ナノサージェリーが可能であることの実験実証および光強度分布の理論計算を行った。実験では、誘電体マイクロ微粒子への非集光フェムト秒レーザ照射により発生させた光増強場(伝搬光:長い実効焦点距離)を用いて、単一パルス照射で多数の細胞への一括外来分子導入を行った。直径1μmの多数のポリスチレン粒子を抗原抗体反応によりNIH 3T3細胞に結合し、単一パルスのフェムト秒レーザパルスを上方より垂直方向に入射した。細胞膜透過性の亢進は、FITC-dextranおよびAlexaFluorで標識したsiRNAを細胞内に導入することにより調べた。照射後、細胞内に蛍光が観察され、細胞膜透過性の亢進が確認された。理論計算では、有限差分時間領域法により水中に誘電体粒子を孤立させた系における光強度分布を求め、入射光強度に対して8.4倍の増強度が粒子直下において得られることを明らかにした。 以上の成果より、細胞膜の高スループット・ナノサージェリーが可能であることを実証した。次年度、本方法による細胞膜プロセシングのさらなる細密化を目指した研究を遂行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の研究計画である「提案方法による細胞膜の高スループット・ナノプロセシング」の実験実証に成功し、Optics Letters誌に刊行した。また、国際会議で複数件の発表を行った。さらに、次年度の研究計画に含まれる細胞膜プロセシングのさらなる細密化を目指した研究として局在集光場の理論解析に前倒しで着手している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、平成24年度は「抗原タンパク質の選択的サージェリー」を目指した研究を遂行する。具体的には提案方法により得られるプロセシング(形成する小孔)の細密化に向け、生体分子ファントムを用いた実験研究および理論解析による粒子径とレーザーパラメータの最適化を行う。
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