最終年度となる平成25年度は、ナノプロセシングの細密化を目的として条件依存性の詳細を調べるとともに、課題研究の発展及び応用に向けた研究を実施した。まず、細胞膜に結合した直径2 μmのポリ乳酸粒子へフェムト秒レーザパルスを照射し、周囲の温度を変化させて細胞膜小孔形成を行った。細胞周囲温度は導入効率に影響を与えず、課題研究における手法のメカニズムにおいて細胞膜の流動性による影響が小さいことが明らかとなった。次に、直径30 nmから500 nmの大きさの異なる蛍光シリカ粒子を細胞内に導入し、細胞に形成される小孔の大きさを推定した。導入可能な粒子の大きさを調べたところ、粒子直径が増加するに従い導入効率は低下した。レーザフルエンス1.06 J/cm2、単一パルス照射条件下では、直径100 nm以下の蛍光シリカ粒子では導入効率は20%以上であったが、直径200 nm以上では導入効率は10%以下となった。いずれの条件においても、細胞生存率に顕著な現象はみられなかった。この結果から、細胞膜に形成される小孔の大部分は、100 nm程度の大きさであることが推定された。以上から、加工径100 nmの細密さが求められる抗原分子の選択的破壊では、より微小領域に増強場を得る必要があることが示された。これは小さい直径かつ高屈折率の誘電体微粒子を用いることで実現できると考えられ、具体的にはポリグリコール酸粒子が将来の候補として挙げられる。課題研究の発展として、マイクロ流路を流れる浮遊状態の細胞に対して細胞膜小孔形成を行った。また、細胞サージェリーと同時に導入分子を放出するシステムに向け、フェムト秒レーザとポリマーカプセルの相互作用に基づく外殻への小孔形成を実験実証した。
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