研究課題
本研究は脊髄損傷や脳梗塞等で失った神経回路・経路を代替する非侵襲的なClosed-loop型の携帯Brain-computer interface装置の開発とその臨床応用を目的とする。最終年度は重度の両下肢麻痺をきたした慢性期(発症後半年以上)脊髄損傷患者5名を対象とし、上肢筋―腰随間の人工神経接続による経皮的腰椎磁気刺激(Trans-Vertebral Magnetic stimulation:TVMS)が歩行機能の再建に寄与するかどうかを検討した。上肢筋活動に依存したTVMSを行うことで脊髄歩行中枢を駆動し、完全運動麻痺の患者であっても側臥位姿勢で下肢の歩行様運動の開始・停止そしてその歩調を随意制御することができた。また刺激によって誘発される下肢の歩行運動パターンは刺激部位依存的に変化することを明らかにした。この人工神経接続を利用して、下肢の随意運動がわずかに可能な不全運動麻痺の患者においてトレーニングを数ヶ月間続けることで、人工神経接続によって生じる歩行運動の歩幅が著明に大きくなることを観察した。また、このTVMSは血圧や脈拍数といった生命兆候に及ぼす影響が軽度であることが同時に確認された。人工神経接続を用いたTVMSにより重症脊髄損傷患者であっても歩行運動を随意制御することができたという結果は、この手法が歩行再建に有用であることを示している。更に人工神経接続の繰り返しにより誘発される歩行運動が増大することから、腰髄にある歩行に関わる神経回路内にシナプス可塑性が誘導され強化された可能性がある。同法は障害された脊髄下行路の機能の補完のみならず、脊髄損傷後の新しいリハビリテーションの方法として発展する可能性を持っている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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JNeurosci
巻: 34(33) ページ: 11131-42
10.1523/JNEUROSCI.4674-13