本研究では,これまで申請者が実施してきた「歩行中の転倒に関する研究」で得られた知見に,近年(独)産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター(産総研DHRC)で開発が進む「健康サービスのための歩行評価技術」を組み込み,これまでの転倒予防・健康増進に関する研究や製品でターゲットとされてこなかった者を主な対象とした,『日常生活の歩容を見守り転倒リスクを利用者にフィードバックすることで,転倒の発生件数を減少させる仕組み』を検討し,このような仕組みを実現する装置の開発を行ことを目的とした. この目的を達成するために最終年度である本年度は,センサ内蔵型端末による転倒リスク評価装置の開発を行ったので以下に報告する. 【センサ内蔵型端末による転倒リスク評価装置の開発】本年度は,研究計画に基づいて,昨年度開発したセンサ内蔵型端末による転倒リスク評価装置の性能向上をめざし,8割以上の精度で転倒リスクを評価できることを確認した.また,当該技術をスマートフォンで利用できるようにするためのソフトウェアを開発した. 【ロコモーティブシンドロームに関連する歩行特徴の評価】更に本研究では,昨年度に引き続き,転倒リスクだけでなくロコモーティブシンドロームのリスクについても歩行特徴を評価し,ロコモリスクの高い者は転倒リスクも高い事や歩行動作の再現性が低いことを確認した. なおこれらの成果については現在国際誌に論文を投稿中である.また,本研究で開発した技術については国内の複数の企業から問い合わせが来ており,近い将来製品に実装されて社会に還元されるものと期待している.
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