研究概要 |
短期間の高脂肪食摂取が一過性の運動に対する成長ホルモンの分泌動態に及ぼす影響を検討した。若年男性10名を対象に、3日間連続の通常食摂取(炭水化物60%, タンパク質20%, 脂肪20%、2725kcal/day)または高脂肪食摂取(炭水化物20%、タンパク質20%、脂肪60%, 2720kcal/day)の摂取期間後に全身および局所(筋線維内、肝臓内)の脂肪量、空腹時および一過性の運動時(最大酸素摂取量の60%に相当する強度での30分間のペダリング)における代謝・内分泌応答を検討した。その結果、体重および体脂肪率には両条件間で有意差は認めらなかった。また、外側広筋、ヒラメ筋、前頸骨筋における筋線維内脂肪量および肝臓内脂肪量には、いずれも両条件間で有意差はみられなかった。空腹時の血糖値には条件間で有意差はみられなかったのに対して、血清インスリン濃度は高脂肪食摂取後に有意に低値を示した(P < 0.05)。また、血清遊離脂肪酸濃度は高脂肪食摂取後に有意に高値を示した(P < 0.05)。一過性の運動中の酸素摂取量に条件間で有意差はみられなかったが、エネルギー産生に対する脂肪の貢献度は運動前の安静時および運動中のいずれにおいても、高脂肪食摂取後に有意に高値を示した(P < 0.05)。一過性の運動中の血糖値および血清インスリン濃度は、いずれも高脂肪食摂取後に有意に低値を示した(P < 0.05)。対象的に、血清遊離脂肪酸およびグリセロール濃度は高脂肪食摂取後に有意に高値を示した(P < 0.05)。血清成長ホルモン濃度は一過性の運動に伴い有意に増加したが(P < 0.05)、これらの変化の動態には条件間での有意差は認められなかった。以上の結果から、3日間の高脂肪食摂取は安静時や運動時における脂質代謝を亢進させるが、成長ホルモンの分泌動態には影響を及ぼさないことが明らかになった。
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