研究課題/領域番号 |
23680065
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河野 史倫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90346156)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 速筋・遅筋特性 / エピジェネティクス / 遺伝子転写 / ヒストン修飾 |
研究概要 |
速筋および遅筋に発生するヒストン修飾の違いを追求している。平成25年度は、ChIP-seqによる転写活性型修飾のゲノムワイドな解析、薬剤投与によるヒストンアセチル化の影響を検討した。正常な足底筋またはヒラメ筋から抽出したクロマチンからH3K4me3またはアセチル化を受けたものを免疫沈降し、次世代シーケンサーを用いで解析した。これらの修飾は、足底筋(速筋)ゲノム上の速筋遺伝子座では多く認められたが、ヒラメ筋(遅筋)ゲノム上では遺伝子発現との関連は見られなかった。ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬を1日1回7日間ラットに腹腔内投与し、足底筋およびヒラメ筋のヒストン修飾および遺伝子発現における影響追及した。阻害薬を投与した場合、足底筋・ヒラメ筋の両方で高アセチル化が誘発されたが、遺伝子発現には影響を及ぼさなかった。また、阻害薬によるアセチル化亢進の程度もヒラメ筋では弱く、遅筋が何らかの特有な脱アセチル化機構を有すると考えられる。以上の結果から、骨格筋においては、ヒストンのアセチル化そのものは遺伝子転写とは関係はなく、筋タイプ特有の遺伝子構造に寄与している可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、筋タイプ特異的な遺伝子のうちエピゲノム変化を伴うものを検索する計画であったが、速筋または遅筋特異的な遺伝子座はそのほとんどが異なるヒストン修飾を保有することが分かった。この結果は当初は予想していなかったものであったが、筋特性を制御する新しいメカニズムを解明する切り口になると期待できる。研究計画をやや変更し、いくつかの実験モデルを用いて速筋・遅筋特有のヒストン修飾がどのように発生しどのような機能を持つのか探る中で、筋タイプの違いによる新たな遺伝子制御メカニズムも見え始めてきている。従って、本研究全体としては当初の計画以上に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋では、ヒストンのアセチル化と遺伝子の転写には関連がないことが分かってきている。遅筋や筋活動が増大した場合に起こる遅筋遺伝子の転写活性化で見られるようなアセチル化を伴わない遺伝子転写が、アセチル化やその他の活性型ヒストン修飾を伴う場合とどう違うのか?ヒストンアセチル化の真の意義を追求する実験が必要であろう。本研究テーマは本年度が最終年度であるが、以上の点について可能な限り研究を推進したい。具体的な方策としては、ヒストンアセチル化によってゲノム構造がどのように変化しているのか、また、それら構造の変化によって遺伝子転写の適応性にどのような影響を与えているのかについて、運動や高アセチル化モデルを用いて検証を行う。
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