研究課題
中高齢期から動脈硬化性疾患（虚血性心疾患，脳血管疾患）リスク予防として，有酸素性運動トレーニングは効果的である。しかし，長期間にわたる療法が必要であり，運動プログラム実施中にドロップアウトする人が極めて多い。そのため，運動による効果が現れるよりも前に運動効果の状況を評価することができるような客観的判断材料，つまり，バイオマーカーがあれば運動継続のモチベーションの向上だけでなく，運動プログラムの見直しなどができると考えられる。そのため，本研究は，動脈硬化に対する運動効果を予測できる血液指標（血液バイオマーカー）を探索することを目的とする。本研究では，中高齢者（50 歳以上）20名を対象に有酸素性トレーニングを8週間実施し，トレーニング前，トレーニング開始2，4，6，8週間後に，動脈硬化指標である，脈波伝搬速度（baPWVおよびcfPWV）を測定し，同時に採血を行った。cfPWVはトレーニング開始2，4，6，8週間後において徐々に低下する経時的な変動示したが，有意に改善したのはトレーニング8週間後のみであった。また，2次元電気泳動法を用いて血液中のタンパク発現を網羅的解析し，経時的に定量した結果，動脈硬化改善が認められる8週目よりも前の4，6週目に発現が変動しているタンパク質を複数検出した。そのなかで12か所のタンパクのアミノ酸解析を行い，動脈血栓に関わるタンパク質や血中脂質に影響するタンパク質などが複数同定された。今後，さらに解析を実施し，動脈硬化に対する運動効果よりも早期に変動するホルモン・タンパクを検出することによりバイオマーカーを同定する。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通り、概ね達成できていると考えられる。中高齢者の有酸素性トレーニングを実施し、動脈硬化指標および採血を経時に測定し、その血液を用いて、動脈硬化改善が認められるよりも前に発現変動しているタンパク質を複数検出した。さらに、そのなかで12か所のタンパクのアミノ酸解析を行い、タンパク質の同定も行った。
本研究結果から、中高齢者の有酸素性トレーニングにより動脈硬化指標は徐々に改善することが示すことができ、その血液を用いて、バイオマーカーとなりうるタンパク室質をいくつか同定はできたが、今後も探索を継続し、さらに、検証実験をヒトと動物実験にて行う。
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