研究課題/領域番号 |
23680072
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
西岡 昭博 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50343075)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エラストマー / レオロジー制御 / グルテンフリー / 製パン技術 / 構造制御 / 米粉 |
研究概要 |
1)米澱粉の結晶化度、オイルの添加量、オイル種の影響 本年度は、特に生地中の気泡成長時における気泡間生地膜と伸長粘度との相間について検討を行った。生地内に発生した気泡(セル)の成長は伸長流動が支配的であるため、生地の伸長流動を明らかにすることが重要である。具体的には米澱粉の結晶化度や油脂の添加の有無による伸長粘度特性への影響について系統的に検討を行い、結晶性米粉に「低結晶性米粉」を添加することで伸長粘度特性を改質できることを明らかにした。またこれに油脂を添加した際の影響を明らかにした。その結果、低結晶性米粉の添加量が40wt%以下では明らかなひずみ軟化性を示し、低結晶性米粉の添加量が増加に伴い、ひずみ軟化性が抑制される傾向が見られた。具体的には低結晶性米粉が60wt%以上でひずみ軟化性が完全に抑制され、ひずみ硬化性を示すことが分かった。一方、同じ系に油脂を添加した場合、系全体の粘度を低下させる傾向が見られ、ひずみ硬化性も若干低下させることが分かった。生地のひずみ硬化性は小麦生地の特徴であり、米粉生地において発現することは予想外の結果である。ひずみ硬化性の有無は製パン性に大きく影響すると考えられ、今後低結晶性米粉や油脂の製パン性への影響についてもさらに詳細に検討する必要がある。 2)エラストマーの構造とレオロジー特性に与えるオイル添加の効果 本研究の鍵といえるオイル添加による系の構造制御をしようとする発想は合成高分子であるエラストマーにおける知見から得られるものである。1)の検討と同時に、引き続きスチレン系エラストマー/オイルブレンドに対して実験を行った。本年度は添加量やオイルの分子量がミクロ相分離構造に与える影響を系統的に明らかにした。添加するオイルの分子量が構造転移に与える影響が明らかに異なり、レオロジー特性へも大きく影響することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においても、当初の申請書の記載の通り順調に研究を遂行した。24年度の研究において、特に注目すべき結果として、低結晶性米粉を添加することで小麦粉だけの特徴と考えられていた「ひずみ硬化」を付与できるというものである。またこの物性への油脂添加の効果も明らかにできた。このような当初の想定外の興味深い結果が得られたことから区分②とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、申請者の専門である高分子材料分野で行われるオイル添加による熱可塑性エラストマーの構造制御技術を食品加工に応用展開することで、(1)オイル添加による米粉生地の粘弾性制御技術の確立とメカニズム解明、(2)この技術を応用した製パン技術の確立を行うことにある。25年度(最終年度)は引き続きオイル添加による生地の粘弾性制御を行うと同時に、実際の製パン性に関する実験も行っていく。生地のレオロジー特性の制御と製パン性との相関を得ることで、最終的には理論に裏付けられた製パン法を確立したい。さらに今年度は研究協力者の協力を得て、理論的な観点でもアプローチをしていく予定である。
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