研究課題
本研究では、機能性食品因子の経口摂取による生体局所特異的生理作用(食シグナル応答)を捉えるため、組織微小領域における多階層のオミクス情報(トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボローム)に微細な多次元変動情報(時間的空間的変動)を付与し、種々の標的分子と各階層における包括的分子群との相互関係を明らかにすることを目的としている。そのため、本年度は、「機能性食品因子応答性生体局所プロテオーム・メタボロームの多次元可視化法の開発」を目指し、そのために、基盤技術となる従来のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析イメージング技術の先鋭化を行った。まず初めに、正常マウスおよびラットの組織切片上で9-aminoacridineをマトリックス(イオン化助剤)として用いたメタボロームのイメージング(一連の代謝物の二次元分布情報の可視化)を行った後、同一組織切片上で2,5-dihydroxybenzoic acidをマトリックスとして用いたプロテオームのイメージングにも世界に先駆けて成功することができた。また、本技術の更なる先鋭化(高感度化および測定可能分子の網羅性向上)を行うため、質量分析の最大のボトルネックであるマトリックス選別と組織へのコーティング条件の最適化を試みた。約100種類近いマトリックスおよびその候補化合物(市販品のみならず新規合成品)ライブラリーを用いてスクリーニングを行ったところ、様々な生体分子(代謝物・タンパク質)を高感度に検出可能なマトリックスが複数存在することを見出し、さらに、従来から汎用されていたスプレーコーティング法よりも蒸着法の方が質の高い代謝物の局在イメージを取得するのに極めて有効であることが明らかとなった。以上の結果は、メタボロームおよびプロテオームの組織内微小領域における二次元分布を同マサンプル上で高感度に可視化できることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りに、同一組織上でメタボロ「ムとプロテオームの二次元分布情報を可視化できるマルチオミクス基盤技術の開発に成功することができた。
本年度開発された基盤技術を更に先鋭化(高感度化・分子網羅性向上)するとともに、既存の標的型分子イメージング法と組み合せることで、取得できたマルチオミクスデータからの生物学的発見が容易となる解析システムの確立を目指す。
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J.Proteomics
巻: (In press)
10.1016/j.jprot.2012.02.011
PLoS One
巻: 6 ページ: e23426
10.1371/journal.pone.0023426