研究課題/領域番号 |
23680073
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤村 由紀 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20390304)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 質量分析イメージング / 食シグナル / メタボローム / プロテオーム / MALDI-MS |
研究概要 |
本研究では、機能性食品因子の経口摂取による生体局所特異的生理作用(食シグナル応答)を捉えるために、組織微小領域における微細な多次元変動情報(時間的空間的変動)を付与することで、種々の標的分子と各階層における包括的分子群との相互関係を明らかにすることを目的としている。そのため、本研究では、初年度に開発したノンターゲット型質量分析技術(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析イメージング:MALDI-MSI)の更なる先鋭化とともに、既存の標的分子イメージング法による食品因子応答性(組織内微小空間レベル)解析を試みた。緑茶カテキンなどの食品因子の機能性の理解には、その作用標的部位における厳密な代謝動態情報が不可欠であるが、既存技術ではその情報の取得は極めて困難であった。これに対して、我々はMALDI-MSIの応用により、経口投与後の緑茶カテキンの組織分布を非標識で可視化するとともに、その薬物代謝反応によって生じる第II相代謝産物の同時可視化にも世界に先駆けて成功した。このような可視化戦略は、既存の標識化が必要な分子イメージング法が抱える様々な問題を克服し、摂取した緑茶カテキンが、いつ、どこで、どのような形で、多様な生体分子(代謝物、タンパク質、転写物など)と相互作用し、その特異的生理作用を発現するかを解明するのに極めて有効な分析技術である。また、こうした食品因子の生体内変換機構を可視化するターゲット型イメージング法の開発に加えて、免疫組織化学染色法により、緑茶カテキンの生体内標的分子である67kDa ラミニン受容体をはじめとした種々のシグナル伝達分子群の可視化にも成功した。こうしたターゲット型イメージング解析の結果は、ノンターゲット型イメージングにより得られる種々の分子局在情報と合わせることで、緑茶カテキンのより厳密な生体局所応答の評価が可能となることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた各種タンパク質および転写物の発現レベルの検証よりも、食品因子自身の生体内での厳密な状態を捉えることが最終的な食品ー生体因子間の包括的相互作用機序の理解に重要であることが新たに判明し、初年度開発した質量分析技術の先鋭化による食品因子とその代謝物の組織内分布の同時可視化技術の開発を進めたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度遅れが生じた各種タンパク質および転写物の発現レベルの検証を進め、さらに得られる包括的分子情報の生物学的意義の理解を深めるために、病態モデルへの適用を目指す。
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