浸潤性大腸がんのモデルマウスであるApc/Aes複合変異マウスにおいては、がん細胞はNotchシグナル伝達依存的に浸潤する。細胞の運動にはRho family small GTPasesが重要な役割を果たすことが示唆されていることから、本年度はApc/Aes複合変異マウスと対象のApc単独変異マウスにおいて、Rho family small GTPasesの活性化状態を調べた。その結果、Apcマウスと比較してApc/Aesマウスのがん細胞において、Rhoの活性化が著しく亢進していることが分かった。一方、RacやCdc42に関しては、活性化が見られないか活性化状態が検出限界以下であった。 続いて、大腸がん細胞の浸潤にRhoがどのような役割を果たすか調べるため、Rho活性化の阻害薬であるC3TやRhoの下流因子として働くRockの阻害薬であるY-27632を大腸がん細胞に処理し、マトリゲル浸潤アッセイを行った。その結果、これらの阻害薬により、大腸がん細胞の浸潤能が著しく抑制されることが分かった。さらに、これらの阻害薬により、Transendothelial migration(経血管内皮遊走)も抑制された。これらのことから、大腸がん細胞が浸潤する際の運動にRhoが重要な役割を果たすことが分かった。Notchシグナル伝達経路がどのようにRhoの活性化を制御しているか、引き続き解析中である。
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