平成25年度では、主に下記の内容に関して研究を行った。 (1)Lyticペプチドの作用メカニズム解析に関して、Lyticペプチドの細胞膜への作用メカニズムを調べるために、人工リポソーム(giant unilayer vesicles (GUV))および蛍光標識したLyticペプチドを用いて解析を行ったところ、時間経過ごとにGUV内の蛍光強度の増加が観察されたが、lyticペプチド処理細胞における蛍光低分子化合物カルセインのGUV内の蛍光強度の増加が確認されなかった。また、癌細胞を用いた免疫染色実験において、lyticペプチドの一部が、エンドソームマーカーearly endosome antigen prtein 1 (EEA-1)と共局在することが観察された。さらに、エンドサイト―シス阻害剤であるサイトカラシンD等の前処理により、癌細胞に対するlyticペプチドの取り込み及び殺細胞効果が減少することが確認された。以上の結果から、Lyticペプチドは細胞膜を崩壊させるだけでなく、低濃度ではエンドサイト―シス依存および非依存的な経路により癌細胞内に取り込まれ、殺細胞効果を発揮することが示唆された。 (2)ハイブリッドペプチドの免疫動態解析に関して、トランスフェリン受容体標的化ハイブリッドペプチド(TfR-lytic)を用いて、正常マウスに投与後の各種免疫動態解析を行った結果、特異的な中和抗体の産生は確認されず、また、免疫細胞の顕著な活性化も見受けられなかった。さらに、ハイブリッドペプチド処理後の溶血活性においても顕著な溶血活性は確認されなかった。 以上、現在までに得られた成果をもとに、EGFRを標的としたハイブリッドペプチドに関して、国内製薬企業と臨床応用化への準備を進めている段階である。
|