研究課題/領域番号 |
23680090
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 義正 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (90360114)
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キーワード | エピジェネティクス / マイクロRNA / 胃がん / エピジェネティック治療 |
研究概要 |
申請者らは一部のマイクロRNA(miRNA)がエピジェネティクス変化により制御されており、がん治療の新たな標的になり得ることを世界に先駆けて報告した。本研究では、miRNAに加え、近年同定された長さ1-10k塩基程度のnon-coding RNAであるlong interventional non-coding RNA(lincRNA)の発現解析およびエピジェネティクス解析を行うことで、胃がんをはじめとする消化器がんの分子病態の解明や革新的な治療戦略を構築することを目的とした。 H23年度の研究では、胃がん細胞株ならびに肝がん細胞株に対してDNAメチル化阻害薬やピストン脱アセチル化酵素阻害薬を用いたエピジェネティック治療を行い、遺伝子発現の網羅的解析を行った。蛋白をコードする遺伝子のみならず、miRNAやlincRNAなどのnon-coding RNAの発現プロファイル解析も行った。解析の結果、複数のmiRNAやlincRNAがエピジェネティック治療によって有意な発現変化を示すことが明らかになった。また、胃がん細胞と肝がん細胞におけるエピジェネティック治療後のnon-coding RNAの発現プロファイルを比較したところ、全く異なる発現パターンを示しており、悪性腫瘍におけるエピジェネティクス変化も臓器により異なっていることが示唆された。さらに胃がん細胞をヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるSuberoylanilide Hydroxamic Acidで処理したところ、細胞増殖の抑制と共にinduced pluripotent stem(iPS)細胞に特異的なmiRNA発現プロファイルと同様の変化を認めた。これは胃がん細胞がエピジェネティック治療により多分化能を有する細胞にリプログラミングされたことを示唆しており、正常細胞へ分化誘導することで全く新しい胃がんの治療法が開発されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度中の目標であったDNAメチル化やピストン修飾などのエピジェネティクス変化により制御されている胃がん関連miRNAおよびlincRNAの同定については、non-codingRNA発現の網羅的解析によりほぼ完了している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降はH23年度の研究により同定された胃がん関連miRNAおよびlincRNAの機能解析およびエピジェネティクス解析を行っていく。特に胃がん細胞をエピジェネティック治療によりリプログラミングすることで正常細胞へ分化誘導することができるかどうか検討する。さらに臨床応用に展開するため、胃がんの腫瘍細胞塊を雄性NOGマウスの背部皮下に移植し、腫瘍抑制活性の検討を開始する。Non-codingRNAを標的としたエピジェネティック治療が胃がんの全く新しい分子標的治療法となるか検討する。
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