研究課題
近年、がん細胞においてヒストンH3の27番目のリジン残基が高頻度にメチル化されており、クロマチン構造の変化を介してがん抑制遺伝子が不活性化されていることが明らかとなった。EZH2はヒストンH3の27番目のリジン残基を修飾するメチル化酵素であり、多くのがん細胞でその発現が上昇していることが報告されている。3-deazaneplanocin A (DZNep)はEZH2を阻害することで抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなり、エピジェネティック治療薬の候補として注目されている。今年度の研究では、胃がん細胞株AGSならびにその比較対象として肝がん細胞株HepG2を用い、EZH2阻害薬の投与によるマイクロRNAの発現プロファイルと抗腫瘍効果について検討した。DZNepならびにヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるsuberoylanilide hydroxamic acid (SAHA)をAGSおよびHepG2細胞に添加したところ、いずれの細胞においてもEZH2の発現が低下し、細胞増殖能が抑制されることが示された。さらにマイクロRNAの発現変化を網羅的に解析した結果、miR-1246がSAHAおよびDZNepの両薬剤により共通して活性化されることが明らかになった。また、miR-4448がDZNepの投与により、miR-302aがSAHAの投与によりそれぞれ活性化することが示された。EZH2阻害薬の投与により、これらのマイクロRNAの標的遺伝子であるDYRK1A、CDK2、BMI-1、Girdinの発現が抑制され、アポトーシスの活性化、細胞周期停止、細胞遊走能の低下などが認められた。以上から、がん細胞にEZH2阻害薬を投与すると、複数のがん抑制マイクロRNAを活性化することで抗腫瘍効果を発揮することが示された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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