研究課題/領域番号 |
23681001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
飯塚 芳徳 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (40370043)
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キーワード | 国際研究者交流(スウェーデン) / エアロゾル / 氷床コア / 古環境変動 |
研究概要 |
大気中に含まれるエアロゾルは大気の性質を決め、その濃度や組成の解釈は大気汚染や地球温暖化の解釈に重要な知見を提供する。特に、過去から現在に至る連続的なエアロゾル組成や濃度の変遷特性を把握することは大気汚染や地球温暖化の将来予測に必要不可欠である。本研究では、南北両極の氷床コアから過去のエアロゾル組成という大気汚染や地球温暖化の解釈に重要で、かつ新しい環境指標を抽出して、氷期間氷期スケールの気候変動に特有な古大気環境を解読している。H23年度は南極氷床の古環境復元にドームふじコアを用い、過去30万年間のエアロゾル組成を分析した。主成分である硫酸塩や塩化物塩の重量比が、イオン濃度から推定される重量比とよく一致していることが明らかとなった。 また、氷期から間氷期にかけての氷期退氷期において、300年間隔という高時間分解能なエアロゾル組成分析をした。その結果、硫酸塩の組成が16500年前を境に急激に変化すること、16500年前から現在にかけて、エアロゾルの主成分になる硫酸ナトリウムの重量割合が南大洋インド洋セクターの海氷面積変動の良い指標になることが示唆された。 他方、北極グリーンランドの古環境復元にNEEMコアを使用した。NEEMコアの最終氷期最盛期、完新世のエアロゾル組成を分析した。その結果、NEEMコアはドームふじコアに比べて塩化物塩が豊富に含まれていること、最終氷期最盛期のNEEMコアにふくまれるエアロゾルは不溶性粒子に硫酸塩と塩化物塩がともに付着している割合が高く、南極に比べてエアロゾル濃度の濃い北極の最終氷期の大気環境が複雑であることが明らかとなってきた。引き続き、NEEMコアの解析を続け、最終氷期最盛期のNEEMコアにふくまれるエアロゾルの特徴を解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の目標に掲げた 1)昇華法を利用して両極の氷床コアに含まれる不揮発性粒子を抽出する、 2)抽出された不揮発性粒子をエネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDS)で分析する、のほとんどを達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、不揮発性粒子の抽出と分析を進め、氷期間氷期変動とエアロゾル組成の挙動を数千年の時間分解能で解読する。北極NEEMコアのイオン濃度の分析データを入手し、エアロゾル組成とイオン濃度の関連性を精査する。
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