研究課題
TDLS方式の分析計は野外観測での稼動実績がまだ僅かであるため、既往の研究から得られる情報は限られている。そこで、はじめにTDLSメタン分析計の精度確認、及び、特性の把握を行なった。検定ガスを用いた精度確認から、TDLS分析計の安定性が高いため、積算時間を長くするほど測定精度が向上することが分かった。簡易渦集積法によるメタンフラックス測定装置を製作した。製作された装置は、フラックス計測に加えて、森林上3高度、森林内2高度の鉛直濃度プロファイラー、及び、自動検定システムが組み込まれた。TDLS分析計が納品された8月に、富士北麓観測サイトに機器の取り付けを行った。現場での自動検定から、測定システム内でのTDLS分析計の精度はおおよそ、0.7ppbであることが分かった。測定を開始した2011年8月~2012年3月の間で、感度ドリフトはほとんど起こっていないことが確認された。製作された測定システムは、渦相関法により計測されたCO_2フラックスと比較され、システムに問題が無いことが確認された。計測されたメタンフラックスは非常に微量であり、測定開始当初のシステムの精度を鑑みると検出限界以下であった。そこで、Hyperbolic Functionを導入してシステムの改善を試みた。その結果、システムの精度は、34.6 ng CH_4 m^<-2> s^<-1>から13.7 ng CH_4 m^<-2> s^<-1>に改善された。計測されたメタンフラックスは、観測期間をとおして負の値をとり、森林がメタンを吸収していることが明らかとなった。また、計測されたメタンフラックスは、明確な季節変化を示さなかった。メタン濃度の鉛直プロファイルから土壌付近において最も低い濃度が観測された。このことは、観測されたメタンの吸収が森林土壌によって起こっていることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
TLDS方式によるメタン分析計が数回のトラブルにより2011年秋期に約1月程度の欠測となったが、それ以外については、おおむね計画通りに研究が進められている。
今年度に設置した微気象学的手法によるメタンフラックス計測システムは問題なく動作しており、継続的なデータが取得できている。一方で、計測されたメタンフラックスが当初想定していた以上に微量であることが明らかとなり、今後、可能ならより高精度なメタン分析計を導入する必要あるかもしれない。一つの可能性として、H24年度の夏ごろに発売予定であるより高精度なメタン計の導入を検討している。次年度は、チャンバー法を用いて土壌でのメタンの吸収の動態について詳細な計測を実施予定である。
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Theor. Appl. Climatol
巻: 109 ページ: 461-472
DOI 10.1007/s00704-012-0587-0