研究課題/領域番号 |
23681007
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
井尻 暁 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 研究員 (70374212)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 微生物 / 海底堆積物 |
研究概要 |
本研究は二酸化炭素の貯留・変換方法の一つである、「海底堆積物中の微生物によって二酸化炭素をメタンに変換し再利用する手法」の実現のための基礎研究として、未だ明らかでない堆積物中での微生物による二酸化炭素変換過程と、生成されたメタンの存在状態について定量的なモデルを作ることを目的とする。 平成24年度6月に地球深部探査船「ちきゅう」による紀伊半島沖熊野海盆の海底泥火山掘削航海に参加し、海底下約150mまでの堆積物試料中の、全炭酸、メタン、酢酸などの濃度・炭素同位体比分析を行い、メタンの大部分が水二酸化炭素還元型メタン生成代謝によって生成されたこと、還元的アセチルCoA 経路を経て二酸化炭素から酢酸が生成されるホモ型酢酸生成の寄与が大きいことを明らかにした。 また8月~9月には国際統合掘削計画(IODP)による337次航海、下北八戸沖石炭掘削航海(地球深部探査船「ちきゅう」)に参加し、掘削孔内から圧力を保持したままの間隙水採取を行い、現場でのメタン濃度を定量し、下北沖の海底下ではメタン濃度が数十mMと高いことを明らかにした。また掘削中の泥水循環により船上に回収されるガスの組成分析、メタンの炭素同位体比のモニタリングを行い、この掘削サイトにおけるメタンは微生物起源のメタンである可能性が高いことを明らかにした。またこの航海で得られた堆積物試料に14CでラベルしたHCO2、酢酸を添加したインキュベーション実験を行い、炭酸還元型メタン生成活性はほとんどないこと、石炭層では酢酸開裂型メタン生成活性が高いことを明らかにした。 また、堆積物中において、還元的アセチルCoA 経路を経て二酸化炭素から酢酸が生成されるホモ型酢酸生成経路の全酢酸生成に対する寄与率をより確かに求めるため、酢酸の分子内炭素同位体定量を自動で行う分析システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の予定通り、地球深部探査船「ちきゅう」による二つの掘削航海(紀伊半島熊野海盆内海底泥火山掘削航海、下北八戸沖石炭層掘削航海)に参加し、これまで堆積物回収時の脱ガスの影響により正確にはわからなかったメタン濃度を定量し、二酸化炭素からメタンへの変換が海底下でどのくらいの割合でおこっているのかを見積もる上で重要なデータを得た。 また本研究計画で当初予定していた通り、酢酸の分子内同位体測定システムを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、平成24年度に下北八戸沖で得られた堆積物試料について、インキュベーション実験、化学組成分析を進め、海底下における二酸化炭素からのメタン生成や、それ以外の変換経路の寄与の見積もりについてより詳細なデータの蓄積を行う予定である。 また平成24年度に紀伊半島沖熊野海盆の海底泥火山から得られた掘削試料を用いたインキュベーション実験も同時にすすめ、堆積様式やテクトニックなセッティングの違いによる、海底下の微生物による二酸化炭素変換経路について考察を行う。
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