研究課題
下北八戸沖の海底下深部に埋没した未熟性の石炭層(褐炭層)に関連する炭化水素循環システムと微生物学的・地球化学的過程を調査することを目的として、2013年の地球深部探査船「ちきゅう」による国際統合掘削計画(IODP)第337次航海「下北八戸沖石炭層生命圏調査」によって掘削された褐炭層(海底下2km)を含む、堆積物コア試料(~海底下2466m)に、14Cトレーサー(sodium [14C]-bicarbonate、[2-14C]-acetate)を添加し、メタン生成活性と酢酸活性を測定した。その結果、酢酸開裂型メタン生成活性は、海底下約2kmの褐炭層より浅部で0.2~1.2 pmol cm-3 d-1であり、最も高い活性は海底下1990mの褐炭層試料で検出された。褐炭層以深では、0.1~0.2 pmol cm-3 d-1程度とより低い活性を示した。一方、水素酸化型メタン生成活性は非常に低く、全ての層準で検出限界(0.05 pmol cm-3 d-1)以下であった。酢酸のメチル基に14Cでラベルした[2-14C]-acetate を添加した試料中の14C-CO2の生成量から見積もられた酢酸酸化活性は、1800 mbsfで最も高く(33 pmol cm-3 d-1)、深度の増加と共に低くなり、夾炭層以深では検出限界以下となった。1800 mbsf付近では緑泥石が多産することから、この深度での高い酢酸酸化活性には、緑泥石に含まれる酸化態の鉄(Fe(III))が電子受容体として寄与している可能性が示唆された。海底下への二酸化炭素貯留の基礎実験として、高温高圧での地下環境を模擬できる高温高圧リアクターを利用して、釧路コールマインから得られた亜瀝青炭試料に二酸化炭素を注入する実験を行った。この結果、高圧下で二酸化炭素を注入すると、二酸化炭素と水素から酢酸を生成するホモ型酢酸生成がおこることが明らかとなった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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