研究概要 |
概日リズムは光や温度変化といった外界からのシグナルに応答し多様な生理現象の周期を外環境に適応させ維持する生命現象であり、分子時計と呼ばれる細胞自律的な機構により制御されている。概日リズムを制御する分子時計は転写活性化因子CLOCK,BMALI及び転写抑制因子CRY;PERの4種類の時計蛋白質により構成される約24時間の周期性をもつフィードバックループである。分子時計とDNA損傷応答について、(1)CRYが進化的にDNA修復酵素と相関があること,(2)PERがDNA損傷因子chk2やATMと結合しアポトーシスや細胞周期を制御すること,(3)PER2やBMALIのノックアウトマウスが発癌や老化の表現型を示すことが報告されている。これらの知見は分子時計とDNA損傷応答の相互関連の可能性を強く示唆するが、これまでにDNA損傷応答と分子時計の関係に注目しその分子機構を明らかにした研究は国内外においでほとんど報告されていない。 ストレス応答性キナーゼMitogen-activated protein Kinase Kinase 7(MKK7)は、細胞分裂、分化、細胞死等の様々な細胞機能を制御する。本研究は、(1)MKK7が哺乳動物培養細胞の分子時計の周期調節に関与すること、(2)MKK7が時計蛋白質の機能調節をすること、を見出した(J Biol Chem. in press)。本研究の成果には、生体のストレス応答に関与するMKK7の概日リズム制御因子としての新規機能の同定及び概日リズムを制御する分子時計の調節機構の理解への貢献が期待される。
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