研究課題
平成24年度は、各種in vitroバイオアッセイ法を用いて、室内ダストで検出される臭素系難燃剤7種とリン系難燃剤16種のハザード特性を評価した。難燃剤のハザード特性は、化学物質種別及びエンドポイント別に階層的クラスター解析を行い、検出される頻度や活性の強度に応じて類型化を実施した。当該類型結果は、前年度に明らかにした室内ダストのハザード特性の類型結果との比較考察を行い、評価優先度の高いハザードを選定した。化学物質種別による類型化は、難燃剤を3つのサブグループ(SG)に大別した。SG1は、BDE-47、-99、-100(以上、POPsとして規制されているPBDEs:POP-PBDEs)、TPHP及び2,6-TXP等が分類され、ERαアゴニスト、AR及びPRアンタゴニスト活性が比較的強く検出されていることが特徴的であった。SG2には、BDE-183(POP-PBDE)、γ-HBCDやTDCIPPを含む8種の難燃剤が分類され、SG1で特徴付けられたERαアゴニスト、AR及びPRアンタゴニスト活性のうち、いずれかが検出されないのが特徴的である。SG3は、いずれの活性も示さないBDE-209等が分類されている。エンドポイントによる類型化は、難燃剤を2つのグループに大別した。SG1には、高頻度に検出されたERαアゴニスト、AR及びPRアンタゴニスト活性が分類された。SG2には、物質特異的に検出される或いは本研究で供試した難燃剤から検出されないエンドポイントが分類された。難燃剤と室内ダストの類型結果は、難燃剤及び室内ダストで共に高頻度で検出されるERαアゴニスト、AR及びPRアンタゴニスト活性が評価重要度の高いエンドポイントであることを示した。本研究は、室内ダストが有するハザードに、国際的・学術的に懸念・関心が高まっている難燃剤が関連していることも併せて示唆した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、室内の生活環境や労働環境でモニタリング及び詳細なin vivo試験を実施すべき優先評価化学物質を、科学的根拠に基づいて提示することにある。平成24年度までの成果によって、室内ダストの評価重要度の高いエンドポイントを提示することが出来ており、ハザード強度と室内ダスト中濃度レベル(既報値参考)から数種類の難燃剤(TPHP及びTDCIPP)の関与を想定出来ている。従って最終年度(平成25年度)には、重要エンドポイントや想定物質に焦点を絞ったシャープな研究が展開可能である。これらのことから申請課題は、目的達成に向けて着実に推進できていると判断できる。
最終年度(平成25年度)は、室内ダストや難燃剤で共に高頻度に検出されるERαアゴニスト、AR及びPRアンタゴニスト活性に着目した総合影響評価に着手する。具体的には、次の3つの課題を実施して、本研究の結論を導出する:(1)日本及びアメリカの室内ダスト複数検体(各n=20以上)を対象とした検出ハザードの一般性・濃度レベルの評価、(2)室内ダストが示すERαアゴニスト及びARアンタゴニスト活性に関連する化学物質プロファイリング、(3)ERαアゴニスト及びARアンタゴニストのin vivo試験評価系の確立とその適用評価。(1)については、評価対象のエンドポイントが確定しており、スムーズな試験実施が可能である。当該試験の実施は、曝露評価に資するデータの導出に繋がる。(2)については、平成24年度から化学物質プロファイリングを実施するためのセミミクロHPLC分画手法の開発を着実に行っており、平成25年度の上半期に開発終了・室内ダストへの適用開始を見込んでいる。化学物質プロファイリングによって、国際的・学術的に懸念・関心が高まっている難燃剤のハザード寄与程度が明らかにでき、相対評価に基づく優先評価物質の提示が見込める。(3)については、平成24年度から研究協力機関の明治大学(川口真以子講師)との共同研究のもと重要エンドポイントに関わるモデル物質を用いてin vivo試験系の開発に着手している。従って最終年度には、平成24年度までの成果によって評価重要度が高いと想定された難燃剤のin vivo試験評価の着手が可能である。
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