研究課題
土壌汚染対策法によって定められている対策は,原則として不溶化処理のように現場内において汚染の拡散を低減することを目的とした措置である.不溶化処理は,安価な資材を有効に活用し,安価に実施可能であるにも関わらず,科学的知見に基づく検討が不十分であるために普及が進んでいない.今年度は,ゼロ価鉄(鉄粉)を用いて,土壌の酸化還元電位と重金属の溶解性ならびに化学状態を追跡した.酸化と還元を繰り返す環境で,重金属がどのような溶解性と化学形態を呈するのかについても,検討を行った.各種溶出試験,逐次抽出法等を用いて,土壌中の金属が保持されている鉱物や元素(吸着ホスト)を明らかにした.カドミウム塩を添加した模擬汚染土壌を調製し,ゼロ価鉄資材を添加後に湛水状態にしたインキュベーションを開始した.土壌のEh値は,ゼロ価鉄を添加した土壌では急激に低下した.それに伴って,土壌溶液中の Cd濃度ならびに溶出Cd濃度も低下した.ゼロ価鉄を添加しない土壌でも,Cdの溶出は低下したが,添加した土壌の方が短期間でCdが検出されなくなった.実験開始後約60日の土壌のCdをXAFS法によって分析したところ,ゼロ価鉄を添加した土壌の方が硫化カドミウムの生成率が上昇していたことが確認された.表層よりも下層の土壌の方が硫化カドミウムが生成しやすいことが確認され,この結果は下層の方がEh値が低く還元的な環境であることと矛盾しない.また,硫黄含有量(交換態)の多い土壌の方が,ゼロ価鉄を添加した際に硫化カドミウムの生成量が増加することが示唆された.ゼロ価鉄の添加によって,土壌の硫黄が酸化数(VI)からより還元的な形態に変化することがXAFS分析の結果から明らかにされた
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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